北陸新幹線の延伸を陰で支える、コンクリート柱を打設する新型枠の威力
北陸新幹線を福井県敦賀市まで延伸する急ピッチの工事で、コンクリート柱を打設する新型枠が威力を発揮している。森本工業(福井県坂井市、森本明寛社長)の鋼製型枠がそれだ。工事日数と作業員数で算出した工数は、従来の鋼製型枠を使う場合の半分だった。頑丈な設計で、施工は追加補強がいらず、一般作業員で従来以上に作業がはかどった。コンクリ型枠は専門職の型枠工の不足が目立つ。森本工業は「ピアロック」の商品名で営業に力を入れる。
熊谷組などの共同企業体が施工する坂井市の工区で、ラーメン構造のコンクリ柱を約350本、別の工区で約60打設する工事で使用。熊谷組、森本工業など3社で開発した。
コンクリに接する面には厚さ4ミリメートルのステンレス板を使い、角部を丸いR材、それを外側から補強リブ付き鋼板で支える構造だ。重いので設置はクレーン作業だが、ボルトとピンでの位置合わせ、ジャッキで左右の高さ調整などは簡単という。型枠をばらす時はピンを抜き、ボルトを緩めれば、難なくコンクリからはく離する。コンクリと型枠が密着するトラブルも避けられる。熊谷組の現場管理者は「型枠のばらし、次の設置作業が速い。今回はコスト面でもメリットが出た」と評価する。
背の高いコンクリ柱を作る場合、木製型枠は打設圧力との兼ね合いで、4メートル弱ずつ、数日かけ、打ち継ぎして作る。今回は新型枠の頑丈さを生かし、連結して一発打設で次々に作り、高さが最大12メートルまで、一発で作った。
森本工業は本業が、トンネル工事のコンクリ打設に使う移動式型枠(セントル)。セントルを売り込みに熊谷組を訪問。その時は不発に終わったものの、型枠の提案ならと、声をかけられた。畑違いの仕事だったが、森本社長は「セントルと製缶の知見で提案した」と経緯を明かす。
今回のコンクリ柱の施工は、作業員数、所要日数で計算した工数で、比較的軽量な従来型の鋼製型枠を使う試算と比べても半分、木製型枠と比べ5分の1で済んだ。
また、従来の型枠で必要だったセパレーター(補強鉄筋部材)が不要で、コンクリをむらなく詰めるバイブレーター作業を簡略化。コンクリ肌の美観にも寄与した。複雑な橋脚にも応用し使った。
課題はコストだ。複数現場で使う前提で見積もっても、「型枠費は従来工法より4割は高い」と森本社長。有望な新型枠にとっての悩ましい点だ。
ピアロックは初の自社商品で10月に特許を取得した。セントルもかつての木製から、効率的な鋼製に変遷した歴史があることから、「粘り強く普及に力を入れる」と森本社長は意気込む。