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企業物価指数が40年ぶり高水準、投資マインド冷やす「原材料高」の行方

企業物価指数が40年ぶり高水準、投資マインド冷やす「原材料高」の行方

資源高での円安が強く意識される中、日銀は金融緩和を続ける姿勢を崩していない(日銀本店)

11月に日銀が発表した10月の企業物価指数(速報値)に産業界で衝撃が走った。前年同月対比の伸び率が1981年1月以来となる40年9カ月ぶりの大きさだったからだ。当時は70年代のオイルショックの影響がまだ尾を引く時期。指数もバブル景気入り口の86年2月以来の高水準だった。一方、ドル円相場は11月23日に1ドル=115円に達した。2021年は企業物価上昇の主因である資源高の中で円安になる「悪い円安」も、にわかに意識した年だった。

「仕入れ先から金属シリコンの価格を5倍に引き上げると打診があった」。10月、アルミニウム製品会社の社員は悲鳴をあげた。金属シリコンはアルミ合金の添加剤として使われ、アルミ製造に欠かせない素材だ。各国がコロナ禍の落ち着きで経済活動を一斉に再開し需要が急騰した。さらに中国の電力供給の制限や工場災害などで需給が逼迫(ひっぱく)。「来年の供給は約束できないとも言われた」と混乱の広がりを打ち明ける。

日銀の企業物価指数は10月に伸び率が40年9カ月ぶりの大きさの前年同月比8・0%上昇となり、続く11月には同9・0%上昇に拡大した。現在の統計手法で比較可能な81年1月以降の最高を記録した。指数は85年12月以来となる35年11カ月ぶりの高水準だった。上昇した品目数は453で全体の6割を超えている。これまで上昇が目立った石油・石炭や鉄鋼、化学製品、非鉄金属などに加え、飲食料品、汎用機器などに波及した。

原材料高は企業収益の下押しになる。建材大手の社員は「先に仕入れていた材料の在庫がなくなった後は大幅な業績悪化が避けられない」とため息をつく。業績の下振れリスクは設備投資を抑制しかれない。中小企業の設備投資は年後半にかけて上方修正する傾向があるのだが、日銀の12月短観では、本来あるべき上昇カーブが横ばい。すでに原材料高が投資マインドを冷やしているとみる向きは強い。

日刊工業新聞2021年12月15日

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