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DIY工具で木板に炭化配線が引ける技術が面白い

DIY工具で木板に炭化配線が引ける技術が面白い

静電容量変化を捉えるタッチセンサーで照明の光量を調整(お茶の水女子大提供)

お茶の水女子大学の石井綾郁大学院生と椎尾一郎教授らは、DIY(日曜大工)に用いられるレーザーカッターで木の板に炭化配線を引く技術を開発した。レーザーの焦点をずらして木の板を焼き切らずに焦がす。木の表面が炭化すると電気が流れる。実際に配線を静電容量センサーや回転角センサーとして利用できた。木肌に炭で模様を作りデザインと電子回路を組み合わせた創作に提案していく。

市販の連続波レーザー加工機で木の板を炭化させる。焦点距離から5ミリメートルずらし、レーザー出力が18―30ワット、レーザー走査速度が秒速380ミリ―460ミリメートルの条件で8―15回加熱すると最適な炭化配線が得られた。炭化する深さは1ミリメートル程度。配線の表面抵抗率は木材によって変わり、1平方センチメートル当たり25―75オームだった。

金属配線と比べると抵抗が大きいが、配線を太くすれば抵抗を下げられる。配線長はレーザー加工機のサイズに依存するが、家具などの大きな木製品にも適用できる。ニスを塗っても抵抗値は変わらなかった。

この配線にマイコンなどを実装して電子回路として利用する。木板に金属のワッシャーやネジで固定すると導通し、ヒンジや磁石固定具などの金具を介して回路を作れる。

実際に照明の光量調節器や着座検知いすなどを製作した。配線部分に触っても感電しない電圧で駆動できている。

今後、炭化配線の設計支援ソフトを開発する。研究用のレーザー装置で炭素物質「グラフェン」を生成して電子回路を作る研究もあったが、DIYに向かなかった。

日刊工業新聞2021年12月14日

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