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数滴の血液から3大疾患の発症リスクを予測するAI活用サービスの仕組み

数滴の血液から3大疾患の発症リスクを人工知能(AI)で予測―。フォーネスライフ(東京都中央区、江川尚人社長)とNECソリューションイノベータ(東京都江東区、杉山清社長)は、少量の採血から将来の疾病の発症確率を予測する血液検査サービス「フォーネス・ビジュアス」において、心筋梗塞や脳卒中などに続き、肺がんを追加した。検査日から5年以内に肺がんが発症するリスクを予測する。今後、肺がん以外のがんにも適用を広げる計画だ。

フォーネス・ビジュアスは、提携先の米ソマロジック(コロラド州)が持つ血中たんぱく質解析技術と、NECの人工知能(AI)を活用。採血した血液中から約7000種類のたんぱく質を測定することで、健康状態や疾病リスクを測定する。肝臓脂肪や耐糖能などの体の状態も可視化し、一人ひとりに合わせた生活習慣の改善策を、健診の検査値の将来予測グラフなども示して提案する。

3大疾患のうち、すでに心筋梗塞と脳卒中については、4年以内に発症するリスクの予測を検査項目として提供。肺がんの検査は、特定の集団を長期間にわたって追跡した欧米の研究において、採血・収集された血液中のたんぱく質を分析・統計解析して開発した。

千葉県がんセンターとの共同研究や専門医などの評価を受けて、日本人への適応の妥当性を確認できたことから、新たに検査項目に加えた。

フォーネス・ビジュアスは医療機関を通して、2000年からサービスを提供中。企業や団体の健診向けはサブスクリプション(定額制)とし、料金は1人につき1ライセンス月額300円から(消費税抜き)。一般の利用者向けの価格は提携医療機関ごとに異なる。

フォーネスライフはNECソリューションイノベータからスピンアウトし、2000年に誕生したベンチャー企業。血液検査や生活習慣の改善提案に加え、スマートフォン向けに「生活習慣フォロー・改善アプリ」も提供し、睡眠ケアや在宅トレーニングなどの健康改善メニューを提供している。

フォーネス・ビジュアスはNECグループ向けを皮切りに、01年1月から提携先の医療機関を通した一般向けにも展開。疾病の予防を中核とするヘルスケアサービスをITベンダーが全面展開するのは珍しい。一般利用者向けと、企業・団体向けを合わせて、4年間で300万人への導入、売上高300億円超を目標に据える。

日刊工業新聞2021年12月9日

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