農業の環境負荷低減と下水処理場の課題解決を実現する「アクアポニックス」とは?
メタウォーターとテツゲン(東京都千代田区)、プラントフォーム(新潟県長岡市)の3社は、岩手県大船渡市で魚と野菜を同時に育てる循環型農業「アクアポニックス=用語参照」を始める。市から下水処理場の敷地の一部を借り受け、国内最大のアクアポニックス施設を建設し、2022年10月からチョウザメやレタスを出荷する。農業の環境負荷低減と下水処理場の課題解決を実現し、地域の雇用創出にも貢献する。
【用語】アクアポニックス=魚のふんを微生物が分解し、植物の栄養にする水耕農法。農薬や化学肥料を使わない有機栽培を実現。植物が水を浄化するので廃水もなく、環境負荷を最小にできる。
3社はアクアポニックスを運営するテツゲンメタウォーターアクアアグリを設立した。資本金は1億円で、メタウォーター37%、テツゲン60%、プラントフォーム3%を出資。
大船渡浄化センター内に2000平方メートルの施設を建設する。チョウザメを最大2000匹養殖可能で、レタスは1日1500株を出荷できる。新会社はチョウザメの付加価値の高い身や卵を販売し、レタスも天候不順の影響を受けずに安定出荷できる。12―13人の雇用創出を見込んでおり、地域経済に貢献する。
プラントフォームは長岡市で1000平方メートルのアクアポニックス施設を運営する。効率化によって生じた未利用地を抱える下水処理場が少なくなく、メタウォーターはアクアポニックスが土地の有効活用策となると見込み20年3月、プラントフォームに資本参加した。また、本業の水処理以外でも地域へ価値を提供できる新規ビジネスとしても期待する。
テツゲンは製鉄所の副生物の再資源化や水処理を手がけている。メタウォーターとは大船渡市の下水処理で協力関係にあり、アクアポニックスによって環境や地域に貢献する事業を拡大する。
日刊工業新聞2021年12月2日