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飛行機のコックピット状態なヤマハ社長の執務室、光にこだわる理由

飛行機のコックピット状態なヤマハ社長の執務室、光にこだわる理由

机の上にはオンライン会議に備え複数のモニターや機材が並ぶ

ヤマハの本社本館3階の役員フロアに私の執務室はある。新型コロナウイルス感染症拡大前は小規模なミーティングを行っていたが、拡大後はオンラインが中心になった。そのため机の上はパソコンやモニター、カメラ、音響機器など、一部は自宅から持ち込んだ機材であふれ、飛行機のコックピット状態だ。ここから動画配信することもあり、自分が使いやすいようにセッティングした。

コロナ禍で国内外の現場へ出張する機会が減った。オンライン会議は必要な時だけでコミュニケーションの頻度が落ちる。このため会議と別に、現場の社員と苦労話やプライベートな話などを自由闊達(かったつ)にオンラインで語る場を2020年6月に設けた。月2回のペースで、およそ700人と話をした。各部門長とも業務報告と別に、旅行や趣味などプライベートな話をする場を設けている。部門長や事業部長も部下と同様の場を設け、社内の潤滑油や意欲アップの場として役立っている。

執務室には当社がかつて手がけた家具を置き、書棚として大切に使っている。自社製品のギターやサックスなどの楽器もあり、気分転換に演奏している。文房具にはこだわりがあり、鉛筆は3Bの硬さがよい。赤ペンはクリムゾンレッドを使う。万年筆は楽譜を書く写譜用を愛用している。使いやすい道具でストレスなく集中するためだ。

室内で考え事をする時は光にこだわる。晴れの日は窓を開けるが、曇りや雨の日は憂鬱(ゆううつ)な空を見たくないので開けない。パソコンモニター上の電子文書をスイッチャーで配置換えし、頭を整理しながら目的を念頭に置いて考える。

「本社に勤務する者は勉学修養を心掛け」で始まる社訓を彫り込んだ木目パネルを机の上に置き、目につきやすいようにしている。当社の歴史の重みや先人の思いが伝わる。

当社は社会課題の解決やサスティナビリティー実現に自発的に取り組み、存在感を高めていく。コロナ収束後も事務手続きなどを経る場合より風通しがよくなるよう、オンラインのメリットを生かしてコミュニケーションを取り、社員がやりがいを持って取り組める環境作りに注力したい。

(「コンテンポラリーアートの風」「私の執務室」「ミュージアム探訪」「産業博物館を訪ねる」を週替わりで掲載します)

日刊工業新聞2021年12月3日

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