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日産はなぜ“売らない店舗”に新型EVを出品するのか

日産はなぜ“売らない店舗”に新型EVを出品するのか

ベータTokyo―Shibuyaに出品した日産の新型EV「アリア」

日産自動車は、商品の体験を中心に据える店舗「b8ta(ベータ) Tokyo―Shibuya」(東京都渋谷区)に新型電気自動車(EV)「アリア」を出品した。同店舗内にある人工知能(AI)カメラなどにより、アリアに対する来店客のデータを取得し、今後のマーケティング活動に生かす。また自動車への関心が薄い客層との製品接点を増やし、EV自体の認知度向上も狙う。

11月に開業した同店舗には全41ブランドが出品された。アリアは化粧品や食品など、車以外の商品に混じって展示される。店舗内には客の店内行動を分析できるAIカメラや、性別と年齢層を識別できる「デモグラフィックカメラ」が備え付けられている。

日産はあえてジャンルの違う商品と同じ場所にアリアを置いて、来店客の反応を分析する。近年の車はコネクテッド技術などで性能が多岐にわたる。従来の「クルマ」という概念が変化しつつあり、日産は新しい販促手法を模索する。

日産の増田泰久日本マーケティング本部副本部長は「ベータでは(来店客と商品との)偶然の出会いがある」と指摘。「他の商品と一緒に展示している中で、車の新たな可能性を来店客に感じてもらいたい」と訴える。

ベータは米国で2015年に売ることを目的としない実証実験型の小売店として始まった。日本国内では今回の渋谷店を含めて3店舗ある。渋谷店では年間12万人の来店客を見込む。

日刊工業新聞2021年12月1日

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