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自転車で「断トツ」追求。ブリヂストンサイクル、ただの移動手段で終わらせない理念

「国内市場の環境が悪くなっても自転車は決してなくならない」(佐藤社長)
自転車で「断トツ」追求。ブリヂストンサイクル、ただの移動手段で終わらせない理念

2月に発売した両輪駆動仕様の通学用電動アシスト自転車「アルベルトe」。部活の重い道具を持っての通学もこれでラクラク。

 ブリヂストンサイクル(埼玉県上尾市)は1949年の設立以来、日本の自転車社会の発展とともに成長を遂げてきた。日常生活の「足」となる自転車のほか、スポーツ用やビジネス用など、利用者の生活様式の多様化に合わせて幅広い車種を世に送り出してきた。

 2015年1月1日付で就任した佐藤社長は「自転車を通して人々の生活の向上と文化の発展に貢献していくことが当社の使命」と説明。「身近でエコで、健康にも良い自転車で社会に元気をもたらしたい」と力を込めて語る。

 同社も属するブリヂストングループは、創業者の石橋正二郎氏が制定した社是「最高の品質で社会に貢献」を今も使命に掲げる。自転車事業を手がける同社も、この使命に沿って技術革新を進めてきた。ダイカスト法により軽量かつ低コストでフレームを組み立てる技術や、駆動部に金属製のチェーンではなく保守が容易なベルトを使う技術は、その代表例だ。

【モーター搭載】
 直近では前輪にモーターを搭載し、人力で動く後輪との両輪駆動を実現した独自の電動アシストシステムを開発。15年2月に発売した通学用自転車「アルベルトe」に初めて搭載した。両輪駆動により走りの力強さを増し、雪道などの悪路への対応も強化。「重い荷物を持ち、何年も長距離走行をしなければならない学生のニーズを取り込んでいきたい」と佐藤社長は意気込む。

 自転車産業振興協会(東京都品川区)の調査によると、14年の自転車の国内向け数量(国内生産台数と輸入台数の合計)は前年比2・4%減の約869万台。人口減少や少子高齢化を背景に、国内の自転車需要は漸減傾向にある。

 その一方で、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)を排出しない「環境に優しい乗り物」として、自転車の価値が再認識される状況も生まれている。週末のサイクリングやファッションとの融合など、自転車のある生活を楽しむ人も増えてきた。

【持続的成長】
 佐藤社長は「自転車はただの移動手段ではなく、ライフスタイルを提案し、社会に貢献する商品へと変容してきた」と指摘。その上で「人口動態など国内の自転車市場を取り巻く環境が悪くなっても、自転車は決してなくならない」と強調する。販売台数が多い日常生活用の一般車(軽快車)を引き続き事業のベースとしつつ、電動アシスト車やスポーツ車などの分野を強化し、事業の持続的成長を目指す。

 今後の成長戦略という点では、中長期的に中国市場での本格販売も視野に入れている。すでに常州市(江蘇省)に自転車工場を構えるが、現状の生産はほとんどが日本向けとなっている。佐藤社長は「中国は環境意識が年々高まっており、日本でこれまで培った知見や技術を生かせればいい」と将来を展望する。自転車という商品を通じた社会貢献の「輪」を、日本だけでなく海外にも広げていきたい考えだ。

 ≪企業概要≫
 現在のブリヂストンから分離・独立する形で1949年に設立された。生産拠点は本社のある上尾工場(埼玉県上尾市)と騎西工場(埼玉県加須市)、中国・常州工場がある。通常の自転車と電動アシスト自転車の両方を商品として持つ。販売は国内が中心で、自転車専門店と量販店を合わせて全国に約1万の販売店がある。「断トツの商品企画力と国内販売ネットワークが強み」(佐藤社長)。14年12月期の連結売上高は481億円。15年1月1日現在の従業員数は900人。
日刊工業新聞2015年04月02日 ひと&会社面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 「中学や高校の夏休みは、自転車でプールによく通った」と振り返る同社の佐藤社長。2014年9月に同社に着任したのを機に、自転車を久々に買ったとのこと(もちろん自社の製品)。購入したのはスポーツタイプの電動アシスト自転車。週末の街乗りを楽しんでおり「急な坂も楽々と上れる」と取材時に笑顔で語っていました。ちなみに親会社のブリヂストンは2014年6月に、国際オリンピック委員会(IOC)と最高位のスポンサー契約を結びましたが、その対象製品の中には自転車も含まれています。

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