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主従関係を変えるまで「やっちゃえなかった」日産

日産の経営に介入しないことで仏政府と合意したが・・
 日産自動車は12日未明、仏政府が資本提携先のルノーへの介入を強めている問題を巡り、ルノーが日産の経営に介入しないことで仏政府と合意したと発表した。西川廣人チーフコンペティティブオフィサー(CCO)は同日、記者団に対し「将来にわたって日産の独立性が確保できることになった」と話した。

 合意内容によると、ルノーは日産の経営に干渉せず、日産は不当な干渉を受けた場合、ルノーへの出資比率を引き上げることができる。日産がルノー株の15%、ルノーが日産株の43%を保有する現在の資本構成に変更はない。

 日産のルノーへの出資比率を25%に引き上げるとルノーが持つと日本の会社法により、ルノーが持つ日産株の議決権をなくすことができる。

 仏政府は「フロランジュ法」に基づき2006年4月から保有するルノー株の議決権を2倍にできるが、議決権は一部制限される。西川CCOは「3者にとって良い合意内容になった」とも話した。

 しかし今の資本構成が固定化され、日産がルノーに収益を上納する構造は何も変わらない。経営危機下にあった日産をルノーが救済してから16年が経ち、今や事業規模は日産がルノーを上回る。事業の実態は親子逆転しているのに資本構成は主従関係のままで不均衡だとの見方は根強い。

 仏政府の介入を巡って日産が独立性を確保するのは当然として、資本構成を均衡に近づけるチャンスと見る向きもあった。自動車産業経営に詳しい黒川文子獨協大学教授は「仏政府の介入をかわすと同時に資本構成をできるだけ均衡にするのが日産にとって望ましい決着かもしれない」と語っていた。

 一方でナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「巨額の資金を投じて資本構成を変えるのは費用対効果から見て賛同しかねる」と疑問を呈した上で「(資本構成を変えるという姿勢は)仏政府へのけん制に過ぎず、現状維持に近い形に決着するだろう」と事前に予想していた。

 仏政府の揺さぶりに日産側の「事実上の敗北」という見方もできる。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
逆に今の資本構成が固定化され、日産がルノーに収益を上納する構造は何も変わらない。仏政府の揺さぶりに日産側の事実上の敗北ではないか。

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