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東郷青児の描く「青児美人」が人々を魅了、新宿の新たなランドマークに

ミュージアム探訪#01 SOMPO美術館
東郷青児の描く「青児美人」が人々を魅了、新宿の新たなランドマークに

東郷青児「望郷」(1959年 油彩、キャンバス SOMPO美術館提供)©Sompo Museum of Art,21020

日本には1000以上の美術館があるとされる。コロナ禍前に計画されたものを含め、新設の動きも止まっていない。美術館は最も基本的な企業の社会貢献活動で歴史は古い。コレクションの逸話や美術館のこだわりなどを紹介する。

伏し目がちで、はかなげな姿が印象的なモダンな美少女。大正から昭和にかけて活躍した洋画家、東郷青児の描く女性たちは、可憐(かれん)でありながらもどこか近未来的でクールな表情を併せ持つ。この「青児美人」は大衆に親しまれ、戦後に一世を風靡(ふうび)した。包装紙やマッチ箱、本の装丁のデザイン画などとして記憶する人も多いかもしれない。

「SOMPO美術館」は、東郷の協力を得て1976年に安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)本社ビル42階に開館した「東郷青児美術館」が前身。コロナ禍の2020年7月、本社敷地内の新棟に移り開館した。ゴッホの代表作「ひまわり」がアジアで唯一見られる美術館でも有名だ。

同社はパンフレット制作を依頼するなど昔から関係の深かった東郷から作品の提供を受け、社会貢献を目的に美術館を設立した。同社の創立100周年を記念して購入した「ひまわり」は、描かれた年が創業年と同じだったことから当時の社長が買い求めたという。

6階建て美術館として生まれ変わった「SOMPO美術館=右」(SOMPO美術財団提供)

同美術館はSOMPO美術財団が運営する。コレクションは主に、東郷作品、損保ジャパンからの寄託作品に加え、美術家支援の一環として収集した作品の三つで構成する。これらの作品の展覧会を催すほか、美術家の表彰事業も当初から手がける。12年から新進作家の登竜門といわれる公募コンクール「FACE」を毎年開催。気鋭の作家を輩出している。

教育普及にも熱心で、東京都新宿区立の小中学校は授業の一環で訪れるそうだ。絵画を鑑賞しながらのディスカッションは、多感な時期に多くの学びとなるに違いない。

個性的な展示が光る同館には根強いファンがいる。現在は「5年後の50周年に向けた企画を練っている最中」(太田裕也同財団事務局長)だそう。新宿の新しいランドマークとなり、これから幅広い客層をつかんでいくだろう。

【メモ】▽開館時間(通常)=10―18時▽休館日=月曜日、展示替え期間など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=JR中央線ほか「新宿駅」▽住所=東京都新宿区西新宿1の26の1▽電話番号=050・5541・8600
日刊工業新聞2021年10月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
SOMPO美術館といえば、ゴッホの「ひまわり」。かつてフランスのアルルで共同生活を送ったゴッホとゴーギャンが、同じキャンバスを使って描いたという作品がここに同時に展示されているのは何とも感慨深いではないか。一方で、同館の歴史は東郷青児抜きには語れない。東郷の名は冠からは外れたが、建物に東郷作品を彷彿とさせる柔らかな曲線を取り入れ、新設のカフェの看板には東郷の直筆文字を再現した。地上に降りた新たな美術館にも、東郷の思いが確かに受け継がれている。

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