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スプーンから学ぶ、金属加工の基本の「き」

おすすめ本の抜粋「原材料から金属製品ができるまで 図解よくわかる金属加工」

金属加工とは

 

私たちの身の周りにあるさまざまな金属製品は、それぞれに求められる製品要件に基づいて、使用する金属材料と金属加工プロセスが選定されて仕上げられています。例えば、食べ物をすくって口に運ぶ金属スプーンは、使用し続けても変形せずにさびにくいことが求められますので、その金属材料に強度があってさびにくいステンレス鋼が使用されます。

 

また、スプーンの食べ物をすくうのに十分な凹形状は、ステンレス鋼の一般的な金属加工法である塑性加工でエネルギーを与えて付与されます。また、スプーンの滑らかな表面は、研磨によって仕上げられます。このように、製品要件に基づいて選定された金属材料にエネルギーを与えて形状や機能を付与して金属製品へと仕上げることを金属加工と呼びます。

1次加工と2次加工

 

金属加工は、素材を形作る 1次加工と、素材に形状や機能を付与し金属製品に仕上げる 2次加工に分けられます。

 

1次加工で使用する元材は、鉱石を製錬・精錬して製造されます。具体的な元材として、鉄鋼材料であれば粗鋼、銅であれば電気銅、アルミニウムであればアルミニウム地金が挙げられます。また、元材として、使用済みのリサイクル材も使用されます。

 

これらの元材を、溶解、鋳造、アトマイズ、粉末冶金、圧延、押出、伸線・引抜きなどの1次加工をし、スラブやブルーム、ビレットと呼ばれる鋳塊、粉末、板、条、型材、管、棒、線、箔などの素材に仕上げます。

 

1次加工で形作られた素材に形状や機能を付与し金属製品に仕上げることを2次加工と呼びます。具体的な形状を付与する2次加工としては、鍛造、絞り・張出し、切断・せん断、曲げ、切削、研削、接合、があります。

 

また、機能を付与する2次加工としては、熱処理、めっきや化成処理などの表面処理があります。これらの2次加工の多くは、いくつかの2次加工を組み合わせて行われる場合が多いようです。

金属加工の流れ
(「原材料から金属製品ができるまで 図解よくわかる金属加工」p.22-23より一部抜粋)

<書籍紹介>
はじめて金属加工について学ぶ人にも理解できるよう、各加工法の解説だけでなく、鉱物から金属材料を経て製品になるまでの加工の流れをつかめるような構成とした書籍。金属加工に欠かせない「金型」「設備」「測定・評価」についてもやさしく解説しているため、これ1冊ではじめて金属加工に関する知識を網羅できる。

書名:原材料から金属製品ができるまで 図解よくわかる金属加工
著者名:吉村 泰治
判型:A5判
総頁数:152頁
税込み価格:1,980円

<執筆者>
吉村 泰治(よしむら やすはる) 
1968年生まれ
1994年3月 芝浦工業大学大学院工学研究科金属工学専攻 修了
1994年4月 YKK株式会社 入社
2004年9月 東北大学工学研究科博士後期課程材料物性学専攻 修了
2016年4月 YKK株式会社 執行役員 工機技術本部 基盤技術開発部 部長
2021年4月 YKK株式会社 専門役員 
博士(工学)、技術士(金属部門)

●著書
『トコトンやさしい金属材料の本』日刊工業新聞社、2019年10月
『銅のはなし』技報堂出版、2019年8月
『パパは金属博士!』技報堂出版、2012年4月
「生活を支える金属 いろはにほへと」(『月刊ツールエンジニア』(大河出版)に2013年4月から2019年10月まで隔月連載)
「モノづくりを支える金属元素 いろはにほへと」(『月刊ツールエンジニア』(大河出版)に2021年2月から隔月連載中)

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章 金属材料とその加工
第2章 原材料から元材をつくる
第3章 元材に形状を付与し金属製品に仕上げる
第4章 元材に機能を付与し金属製品に仕上げる
第5章 金属加工を実現させる金型
第6章 金属加工を実現させる設備
第7章 金属加工を下支えする測定・評価技術
第8章 金属加工のこれから

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