シンフォニアテクノロジー初の生え抜き社長が胸に刻む経営哲学の原点

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武藤昌三会長

受け身体質変革、ベクトル一つに

「大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし」―。中国で四書五経の一つに数えられる「易経」にある言葉を胸に刻む。

「おごらず、唯我独尊にならず、部下を含めたあらゆるステークホルダーの意見に耳を傾ける度量を持たねばならない」

自身の経営哲学の原点だ。「孫子の兵法」をはじめ、中国の古典に経営者としての心構えを学び、経営戦略にも生かしてきた。

社長に就いたのは2009年。神戸製鋼所出身者が9代続いた後の初の生え抜き社長だ。企業風土に染みついた受け身体質を変革し、いかに自然と動く組織をつくるか。社長就任後すぐに「エコ」と「海外」という二つの旗を掲げ、十数におよぶ各部のベクトルを一つの方向に合わせた。

経営トップとして最も刺激を受けたリーダーがいる。過去、創業家以外から初めてオムロン社長に就任した作田久男氏だ。友人のつてで懇意になり、たびたび相談に訪れた。

「『武藤さん。社長と副社長の精神的な責任の重さの違いがわかりますか。社長10に対して副社長は1。トップはそれだけ重責です』。今でもこの教えは印象に残っている」

社長就任後、経営指標で重視したのは財務体質の強化だ。90年代後半、シンフォニアテクノロジー(当時は神鋼電機)は財務的な窮地に追い込まれ、赤字縮小のためのリストラで疲弊していた。過去のトラウマを拭い去り、次なる成長に向け財務体質改善を最優先事項に設定した。

キャッシュフロー経営を推し進めた結果、自己資本比率は就任時から約2倍に達した。一方、有利子負債は半減し、足元では実質無借金経営を視野に入れる。

また、半導体製造装置にウエハーを供給するインターフェース部「ロードポート」で世界シェア首位に立つなど売上高も伸長した。社長、会長を通して、当初目標はほぼ達成したが「新技術、新事業を生み出す力がまだまだ足りない。開発、設備投資をさらに増やし、確かな成長軌道に乗せなければならない」と前を見据える。

一貫して力を注いできたのが次世代リーダーの育成だ。自身の名前をもじって10年に「昌下村塾」を開講。

「自ら課題を見つけ、学び、そして課題を解決できる人材を育てていく」

「龍を育てよう」を合言葉に上級管理職の研修を始めてから、これまでにのべ100人以上が受講した。(鈴木真央)

【略歴】ぶとう・しょうぞう 70年(昭45)金沢大工卒、同年神鋼電機(現シンフォニアテクノロジー)入社。02年電機システム本部豊橋製作所長、03年取締役、05年常務、07年専務、09年社長、15年会長。福井県出身、74歳。

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日刊工業新聞2021年9月7日

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