三菱ケミカルが「次世代ラボ」開発に着手。その理由とは?
三菱ケミカルは、自動・自律実験を可能にする次世代ラボの開発に着手した。2021年度中に横浜市青葉区で完成予定の新研究棟に自動実験設備などを導入し、実証検討を行う。実験の高速化によりデータ生成量を増やし、データ解析の精度や新素材開発の効率を上げる。実験の自動・自律化は国内外の大学や企業で技術開発が活発化しており、デジタル変革(DX)の重要な要素となりそうだ。
三菱ケミカルは、次世代ラボ技術の開発を3段階で進める。まず市販の自動実験設備を用いて、切り替え可能な内容を選び、手動の実験を代替する。次に同設備の適用範囲を広げるための周辺技術・装置を開発する。最終的に、実験手順や実験結果から次の実験内容を決める実験設計をコンピューターが行う「自律実験」を目指す。
サイエンス&イノベーションセンター(SIC、横浜市青葉区)に建設中の新棟での実証検討に向け、自動実験設備のプログラミングや改良を行っている。例えば、自動計量装置は高粘度の試料の計量が難しいなど、装置ごとに特徴があるため、周辺技術開発や改良で利用範囲を広げる。一連の投資額は非公表。
新研究棟内の実験室や設備は、将来ロボットが働くことを想定して配置する。また自律実験の研究の盛んなカナダ・トロント大学に留学生を派遣し、情報を収集している。
研究開発(R&D)分野のDXは新素材候補を効率的に探索する手法(マテリアルズ・インフォマティクス、MI)が注目されている。データ生成の拡大はMIの精度向上に不可欠で、「DXを加速し、研究者の創造性を最大化したい」(樹神弘也SICマテリアルズデザインラボラトリー所長)という。
実験の自動化は、英リバプール大学が20年8月に人間なら数カ月かかる化学実験をロボットが8日間で完了させたと発表し、注目された。旭化成は22年度に国内拠点で概念実証(PoC)を行う予定。