“厄介者”火山灰で排水処理を手助け、巨大企業も目を付けたスタートアップの挑戦

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火山灰由来の凝集剤「きよまる君」

黄色い水性塗料で濁った水に白い粉末を混ぜると、水面に黄色い固形物が浮上して水が透明になる。塗料と粉末が一体となったのだ。固形物を取り除いた水は排水することも、再利用もできる。

粉末はHALVOホールディングス(東京都中央区)の凝縮剤「きよまる君」。プラスに帯電しており、マイナスを帯びた汚れを引き寄せて凝集し、廃水処理を手助けする。

塗料以外にも効果を発揮する。自動車メーカーは金属の切削に使ったクーラント液の処理にきよまる君を採用している。汚れを凝集して回収できるので、クーラント廃液の処理費を圧縮できている。しかも、きよまる君の正体は火山灰。他の凝集剤は有機物が主成分だが、火山灰は無機物なので環境への影響が少ない。

HALVOのルーツは鹿児島県の塗装業者。塗装廃液の処理に困った創業者が火山灰に目をつけ、「火山灰の無数の穴にプラスの電荷を大量に入れるレシピを開発した」(永原一佳HALVO社長)という。地元には厄介者の火山灰が、環境保全に役立つ素材になった。

(右)黄色く濁った水(きよまる君投入前) (左)きよまる君投入後、水中の汚れが固まって浮上

永原社長は2017年、「水がなくて困っている人にきれいな水を届けたい」とHALVOを起業。だが、途上国で飲料水製造に使ってもらうには採算が合わなかった。「企業規模を大きくして資金に余裕ができないと貢献ができない」(永原社長)と考え、製造業の廃水処理への提案を始めた。

そして転機が訪れた。20年6月、水処理会社であるグリーン&ウォーターを買収した。相手の規模が大きいため「HALVOが買収されたと思われた」(同)と笑う。安定した事業基盤を手に入れ「途上国にきれいな水を届ける夢を追える」と意気込む。

災害時に必要な水を作れるように粉末を錠剤にした商品を開発した。日本での売り上げに応じて途上国にきよまる君を寄付する計画だ。起業した当時の思いを抱き、飛躍の時が訪れた。

日刊工業新聞2021年9月16日

三菱パワーが排水処理に火山灰凝集剤を活用

日刊工業新聞2021年9月15日

三菱パワーはタービンを製造する高砂工場(兵庫県高砂市)に火山灰を原料とする凝集剤を使用する廃水処理設備を導入した。設置面積を既存設備の3分の1に小型化し、投資額を75%削減した。工場の屋内に配置でき、廃水が外部に漏れ出すリスクも減らした。効果をグループ拠点に共有するとともに、厄介者の火山灰を有効活用した事例として社外にも発信する。

タービンの検査に使用した蛍光探傷廃液の処理に新しい設備を導入した。火山灰由来の凝集剤はHALVOホールディングス(東京都中央区)が開発した「きよまる君」を使用。濁った廃液に注ぐと、水中の蛍光探傷剤を固形物にする。水面に浮上した固形物を取り除くと水は透明に近づく。1日8時間稼働で8立方メートルを処理できる。

高砂工場には既設の廃水処理設備が5基ある。いずれも6種の薬剤を使うため設備が大きく、屋外に設置している。

また、厳しい水質規制がある瀬戸内海に面しており、万が一の流出を防ぐ防液堤も整備している。

きよまる君はプラスに帯電しており、マイナスを帯びた水中の汚れを引き寄せる。凝集が速く設備を小型化できたため、工場内に配置できた。作業員の目が届くので廃液が漏れても発見が早い。また薬剤が減った効果で汚泥量も半減でき、運転費も削減できる。

火山灰原料の凝集剤を使う廃水処理設備。従来の3分の1に小型化し、工場内に設置できた

きよまる君を利用する自動車メーカーの新聞記事を読んだタービン品質保証課の重藤英雄氏が社内に提案した。「私は鹿児島の出身。地元で厄介者の火山灰を活用するというコンセプトにひかれた」と語る。会社として推進する持続可能な開発目標(SDGs)にも合致すると思った。

また重藤氏は車椅子利用者で、防液堤のある屋外の設備には近づけなかった。屋内だと自身で設備を確認でき、仕事をしている実感が高まったという。高砂工場の既存廃水処理設備へのきよまる君の採用を検討するとともに、国内外のグループ拠点にも情報を共有する。

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

私は経験がないのですが、火山灰が降ると車の清掃などが厄介なそうです。その火山灰が社会に役立つ商品になっています。しかも三菱パワーなど巨大企業が採用しています。そしてベンチャーが、歴史ある企業をM&Aしました。社会課題解決を掲げて起業するベンチャーが多いですが、一つの成功事例と思いました。そしてストーリーがあり、個性を感じます。

キーワード
火山灰 SDGs

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