「採用したくてもできない」。中小企業が高卒者を採用するための秘訣
2022年3月に卒業する高校生の採用試験が16日から始まる。厚生労働省の調査では7月末時点での高校生の求人倍率は前年同期比0・30ポイント上昇の2・38倍。コロナ禍前の20年3月卒の倍率(2・52倍)には及ばないものの、人手不足を背景に企業が若手の積極採用に動いた19年3月卒の倍率(2・37倍)と同水準にまで高まっている。特に中小企業の採用意欲は高く、企業の成長に不可欠な若手人材の確保に力を注ぐ。(編集委員・大友裕登)
21年の採用企業の動きについて、リクルートワークス研究所の古屋星斗研究員は「中小企業の求人数が伸びている」と指摘する。
厚労省が9日公表した「ハローワーク求人における求人・求職状況」によると、従業員99人以下の企業の求人が全体の6割強を占め、求人数の前年同期比較では従業員29人以下の企業で5・4%増、30―99人以下の企業で6・7%増となっている。
古屋研究員は求人が伸びた要因を「若手を採用したくても採用できていない中小企業が多く、“積み上がった”求人はたくさんある。絶対に採用したいと思っている企業が多い」と分析する。
中小企業の「今回こそ採用する」という意欲が数字に表れている格好だが、倍率は高く激しい採用競争となりそうだ。中小経営者の意欲を実際の採用に結びつける上で、古屋研究員は若手との接点づくりの重要性を説く。
古屋研究員は「(高校生が)仕事を“自分事”にするには、若手社員の話を聞かせるのが重要」と話す。年齢が近い若手社員の話は高校生にとって、入社して2―3年後の姿、イメージを自身に重ねやすい。さらに、年齢が近い社員がいることで悩みを相談しやすい環境という印象にもなり、安心感を生む。採用に限らず、年の近い同僚のいる職場は定着の面でも効果があるという。
少子化で労働人口の減少が続く中、大手・中小を問わず若手人材確保の重要性は増している。採用側には工夫の必要がありそうだ。