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エプソンがペーパーレスに反旗!使用済み紙を3分で新品の紙に再生

碓井社長が世界初の製品開発の想い語る
エプソンがペーパーレスに反旗!使用済み紙を3分で新品の紙に再生

ペーパーラボ

 セイコーエプソンは1日、使用済み用紙をオフィス内で新しい用紙に再生する製紙機「ペーパーラボ=写真」を開発したと発表した。使用済み用紙を投入すると3分後には再びプリンターで印刷できる用紙を生産する。商品化は2016年内の予定で、売上高100億円を目指す。

 オフィス内で紙資源をリサイクルできる世界初の製品。使用済みの用紙を衝撃で綿のような繊維レベルまで分解し、インクなどを抜いた後に再び成形して紙にする。強度や色の調整が可能で、A3やA4、名刺など必要な用途に合わせた厚さやサイズの紙を社内で生産できる。

 印刷1分間に14枚、8時間稼働で6720枚の製紙が可能。製紙工程に水を使わないので企業内で導入しやすい。コストについて碓井稔社長は「新しい用紙を購入するよりも経済的メリットがある」とした。

 小型化を進め、コピー機と並べて設置できる商品を目指す。従来、使用済み用紙は業者に引き取ってもらい、再生紙にしている。新製品は機密文書でも社内で再生するので情報漏えいを防げる。


碓井社長に聞く「紙をなくすよりも使用で感じる罪悪感をなくす方がニーズ」


 セイコーエプソンは使用済み用紙をオフィス内で新しい用紙に再生する製紙機「ペーパーラボ」を開発した。オフィス内での紙資源のリサイクルは世界初。新しい用紙を購入するよりもコストを抑えられるといい、紙リサイクルのシステムを大きく変えそうだ。「ペーパーレス化への流れを押し返したかった」と語る碓井稔社長に開発の狙いを聞いた。
 
 -開発のきっかけは。
 「主力のインクジェットプリンターの印刷費は安く、利用者に安心して使ってもらえると思っている。それでも紙を使うと自然環境に良くないイメージがある。紙の利用に感じる後ろめたさを取り払いたいという志で開発した」

 -ペーパーレス化が紙資源問題の解決策と考えられています。
 「ペーパーレスは飛躍しすぎだ。解決策として決めつけられているし、顧客視点から外れていると思う。考える時は紙がいいし、便利だ。冷静に社会ニーズに向き合った技術開発をしないといけない。紙をなくすよりも、使用で感じる罪悪感をなくす方がニーズと思い、ペーパーラボを開発した」
 
 -ペーパーラボは本業で環境に貢献する新しいジャンルの商品です。
 「エプソンでないとできないモノで環境問題の解決に貢献したい。可能な限り省エネルギーであり、可能な限り小型化して原材料を減らす。解決は大きなビジネスチャンスだ」

 -短期の業績よりも長期視点のESG(環境・社会・企業統治)情報で企業価値を判断しようとする投資家が増えています。
 「自分たちを存続させることに執着すると目先の利益だけになる。世の中に向かって自分たちの存在意義を発揮しないと。長期的に環境視点で何をすべきか考える高い志がないとイノベーションも起こせない。もちろん夢だけでもだめ。ビジネスのシナリオが必要だ」
 
 -シナリオとは。
 「何十年後にやっと利益が出るようではシナリオにならない。最終目標にたどり着く途中でも稼げるシナリオが求められる。インクジェットも家庭用から始まり、いまはオフィス用や産業用に広がってきた。ペーパーラボも小型化を進め、いつかプリンターのように設置できるようにしたい」

 <記者の目>
 使用済みの用紙を原料にオフィス内で新しい用紙を作るというコンセプトに独創性を感じた。わずか3分で新しい用紙ができるというスピードにも驚いた。発売は2016年4月以降。紙を大量に使い、機密文書の扱いも多い企業への導入が見込まれる。碓井社長は「紙のもっと良い使い方を社会に問う」という。商品化後の市場の評価が気になる。
(聞き手=松木喬)

(2015年12月7日環境面掲載)
日刊工業新聞2015年12月2日環境面記事に加筆
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
碓井社長がインタビューに応じてくれました。いつものようにポジティブな話題ばかり飛び出す楽しい取材でした。 それにしても1日の発表会場で衝撃を受けました。文字が印刷された用紙でもオフィスで新しい紙に再生できるってすごいと思いました。11年から開発を始めていたそうです。エプソン得意のインクジェットや時計の技術の延長ではありません。目先の利益を追えば既存の技術を活用した方が簡単に開発できます。長期視点の開発だったのでエプソンは新しい技術の開発に挑戦し、新しい技術を手に入れました。

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