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電池材料や感染症予防技術で期待の「酸化グラフェン」。NSCが量産技術を確立

EV電池材、安く高性能
電池材料や感染症予防技術で期待の「酸化グラフェン」。NSCが量産技術を確立

原子間力顕微鏡で撮影した酸化グラフェン(破片状の箇所、画像の横1辺は45.17マイクロメートル)

NSC(大阪府豊中市、川久慶人社長)は、電動車の電池材料や抗菌・抗ウイルス、触媒の新素材と期待される酸化グラフェン(GO)の量産技術を確立した。高純度化や製造の廃液処理が難しいGOの専用装置を開発し、2022年1月から月間100キログラム生産する。約10社に供給する商談に入った。22―23年には20億―40億円を投じ、年産20トンの専用工場を新設する。高品質で低コストのGOの商業生産を目指し、競争力ある電池材料や感染症予防技術として訴求する。

NSCはGOの量産に向け原料になる99・95%の高純度な黒鉛(グラファイト)を年間50トン製造する試験装置を設置した。

黒鉛は厚さ0・34ナノメートル(ナノは10億分の1)のグラフェン層(厚さは炭素原子1個分)が重なったもので、グラフェンを酸化したのがGO。厚さは1ナノメートル。絶縁性や高い機械強度、比表面積などの優れた特性を備える。

しかし、製造に使う強酸の除去や廃液処理が困難で、純度が低いと特性も低下する。国内事業者の生産はまだ少量にとどまる。

NSCは「ハマーズ法」と呼ぶ製造方法でGOを量産し、強酸を除き高純度化する技術を確立。20年夏に開発に着手し、熊本大学大学院の速水真也教授の協力を得た。廃液についても、主力の化学処理事業で培った高度な既存設備と技術で処理する。水に分散した水溶液や固形化した状態でGOを供給する。

GOは固形で1グラム約1万円と高価だったが、黒鉛から一貫生産し量産効果で最終的には1キログラムで数万円に抑え需要を喚起したい考え。電池材料や通信関連のほか、感染症対策用途ではトイレや繊維関連で商談を進める。数年後に10億―20億円の販売を見込む。

専用工場は本社に建てた場合は20億円、本社外ならば40億円を投じる計画。GOの事業化には日本触媒や仁科マテリアル(岡山市北区)なども取り組んでいる。海外では台湾、中国、米国などの事業者が先行するという。

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日刊工業新聞2021年8月24日

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