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“稼ぐ力”が過去最高になったオムロン。成果の背景に「ROIC経営」

“稼ぐ力”が過去最高になったオムロン。成果の背景に「ROIC経営」

山田 義仁社長

厚めの手元資金、成長へ積極投資

オムロンの収益力が高まっている。コロナ禍で2021年3月期の連結売上高は前期比3・3%減となったものの、“稼ぐ力”を示す売上総利益率は過去最高で前期比0・7ポイント増の45・5%を達成。当期利益は19年に実施した車載事業の売却益の反動を除けば、実質増益だった。22年3月期は、需要が回復している中国向け制御機器などを中心に取り込み、全セグメントで増収、営業増益を見込む。

こうした筋肉質な企業体質は、工場自動化(FA)機器など主力事業への追い風だけでなく、13年に国内でも先んじて導入した投下資本利益率(ROIC)を指標とした経営の成果と言える。

同社のROICは当期利益を投下資本(純資産+有利子負債)で割ったもの。20年3月期までの10年で約13ポイント上昇し14・1%(21年3月期は車載事業売却益の反動で7・8%)、その間推進した事業ポートフォリオの変革や各事業の改善などで同期間の売上総利益率は9・7ポイント増えた。

ROIC導入当初90以上あった事業は経済価値・市場価値評価で測り、現在では60事業程度に再編。19年には約1000億円で日本電産に車載電装部品事業を、直近ではミネベアミツミの子会社にアナログ半導体・微小電気機械システム(MEMS)の工場売却などを発表している。共に成長分野だが、技術や関連資産の譲渡が自社の事業とより高いシナジーを見込めると判断した。

大上高充執行役員グローバル理財本部長は「21年3月期末の現預金残高は2500億円と厚め。これを次の成長にどうつなげられるか」と意気込む。事業モデルを変革し、モノの提供にとどまらず、サービスやパートナー企業との協創などを通じて社会課題を解決し、企業価値を高める絵を描く。そのための人材やデジタル変革(DX)にも積極投資する計画だ。

小宮知希三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストは「22年3月期からは事業環境が正常化するなどで、業績は24年3月期の過去最高営業利益更新に向け安定成長局面に戻る」と見ている。コロナ禍一巡後の成長投資の行方が注視されそうだ。

日刊工業新聞2021年7月8日

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