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廃炉作業に強い味方。燃料デブリ探査向け水中ロボがスゴい!

海上技術安全研究所が開発
廃炉作業に強い味方。燃料デブリ探査向け水中ロボがスゴい!

東電福島第一原発の燃料デブリ探査用に開発した小型水中ロボ(海技研提供)

海上技術安全研究所の鎌田創主任研究員らは、東京電力福島第一原子力発電所の燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の水中探査向けにサブボトムプロファイラー(地層探査装置)搭載の小型水中ロボットを開発した。音波でデブリの堆積構造を調べる。事前実験では模擬デブリのコンクリートとステンレスの境界を識別できた。

研究コスト『減』・廃炉選択肢『増』

小型水中ロボのサイズは幅55センチ×奥行き45センチ×高さ80センチメートル。搭載するサブボトムプロファイラーは、水中スピーカーから発した音波の反射波を水中マイクで受けて海底地下の堆積構造を可視化する。計測中はスラスターがノイズにならないように止める。浮力材の浮力で静止する。

事前実験ではステンレスブロックとコンクリートブロックを重ねた模擬デブリを使い、その境界を識別することができた。燃料デブリは核燃料と溶けたコンクリートが混ざっていると考えられる。堆積構造が分かるとデブリ取り出しに向けた情報が得られる。小型水中ロボには操作のための広角カメラを搭載した。ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)で原子炉内部の設計3次元(3D)データと計測データを見ながら操作できる。これにより、初めての空間でも落下物や構造物を避けて調査しやすくなる。

ロボ本体は市販の低価格機を採用した。従来は価格が1000万円以上したが、50万円程度で調達できる。研究コストを下げて廃炉への選択肢を増やす。

日本原子力研究開発機構の「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」の助成を受けた。

日刊工業新聞2021年8月13日

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