リアルタイムの天気を反映。デジタルアートの進化がスゴい!
デジタルアートが進化している。三井デザインテック(東京都中央区、檜木田敦社長)は、7月に移転した東京・銀座の新本社で、オフィス内の人数によって変化するデジタルアートを設置。森ビルは東京・六本木の本社応接室ロビーに、リアルタイムの天気を反映した作品を展示する。デジタル技術を駆使することで、人手では難しい個性的なデザインを表現している。(大城麻木乃)
【稜線を再現】
三井デザインテックは、デジタルアートに強みを持つラナユナイテッド(東京都港区)と共同で、ビーコン(発信機)や入館証からその場の人数を把握し、人数が増えると色が濃くなるアート作品を制作した。例えば、社員は紫の花、ゲストはピンクの花で表しており、ピンク色が増えれば、来客者が多いことが分かる。
アート作品を反映するリアルの壁も工夫を凝らしている。腕利きの左官に流線形の波模様を白壁につけてもらい、波の形に沿ってデジタルで枝や山の稜線(りょうせん)を再現する。フラットな壁に再現するよりも立体的で生き生きとした印象となり、「当社が得意とする新旧の技術を掛け合わせたオリジナルの作品になった」(見月伸一執行役員)と胸を張る。
同社はホテルやオフィスの内装を手がけ、デジタルアートを含む新本社を「ショールーム」(同)として機能させ、自社の技術力や提案力を顧客にアピールする。
【大分の田園風景】
森ビルは本社応接室ロビーにチームラボ(東京都千代田区)による大分県の田園風景を再現したデジタルアート「四季千年神田図―田染荘」を展示する。田染荘は千年以上続く日本最古の田園風景とされ、春夏秋冬で現地の風景が変わるように、アート映像も季節に応じて変化する。また、現地の気象情報とアート映像をリアルタイムに連動させ、現地で雨が降ると、映像でも雨が降る仕組みだ。
森ビルは森美術館を所有し、「文化や芸術を大切にする当社の思いを来客者に感じてもらうために設置した」(広報室)という。
【味わいある作品】
野原ホールディングス(HD)は落合陽一氏率いるピクシーダストテクノロジーズ(東京都千代田区)と共同で、ピクシーが開発した人工知能(AI)デザイン自動生成技術を活用して壁紙ブランド「WhO(フー)」のデザインを制作した。新デザインは、縦と横にセーターの編み目のような独特のパターンが描かれた味わいのある作品。新柄として7月中旬に発売した。
AIにデザイン1000点を読み込ませ、ディープラーニング(深層学習)を行い、100点のデザインを自動生成。この中から、「学習した要素を複雑にデザインへと昇華させたAIならではのオリジナリティーあふれる1点を選んだ」(広報)という。
落合陽一氏は「壁紙とは家屋の人工的な構造に自然のような風景をもたらすもの。計算機(デジタル)と調和する新しい自然の風景が皆さんの生活の一部になることをうれしく思う」とのコメントを出した。
消費者の趣味趣向が多様化する中、デジタル技術を使った他社にはまねできない製品・作品をつくる動きが増えていきそうだ。