国際宇宙ステーションで生育した「コケ植物」に見られた変化
富山大学の蒲池浩之准教授らは、微小重力状態でのコケ植物の機械的特性を明らかにした。国際宇宙ステーション(ISS)でコケ植物を生育。その結果、微小重力に比べ過重力で生育した方が太く短い茎が形成された。加えて茎の強度が増加しても材質が柔らかいことが分かった。宇宙で通常の植物と異なるコケ植物が成長する過程の理解につながることが期待される。
植物には重力が増加すると茎が太く短くなったり、細胞壁が硬くなるなどの特性が知られている。植物の重力に対する応答は、植物全体に養分や水分を運ぶ維管束を持つ「維管束植物」で研究されてきた。一方、木質化した細胞を持たないコケ植物の重力への性質は知られていなかった。
研究チームは維管束植物に似た形態を持つコケ植物「ヒメツリガネゴケ」に注目。重力を微小重力から10Gの過重力まで変化させて生育した後、形態や特性を検証した。過重力になるほど一般的な植物と同様に太く短い茎が形成された。重力が増えるごとに断面の形状を変化させることで、茎の強度が増加することが曲げ試験で分かった。
しかし茎の材質は柔らかくなり、曲げに対する強度が一定に保たれることが明らかになった。
維管束植物では茎の材質も重力に依存して硬くなり、コケ植物とは異なることが明らかになった。維管束植物は質量が大きいことから、成長に伴って茎や幹の強度を調整する必要がある。一方、コケ植物は成長しても荷重変化は少なく、茎の強度を一定に保つことが優先されていると考えられる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)や北海道大学、京都大学などとの共同研究。
日刊工業新聞2021年8月11日