誕生60周年迎える「リポビタンD」。その誕生と進化の秘密
大正製薬のドリンク剤「リポビタンD」が誕生し、2022年で60年を迎える。1962年の発売以降、これまで約420億本以上(21年3月末時点)を販売してきた。海外に販路を拡大する一方、ドリンク剤のほかにゼリータイプや凍らせて飲むタイプやなども商品化。大人から子どもまで、飲む人のニーズに合わせて、進化を続けている。(編集委員・丸山美和)
【熱中症対策品】
大正製薬は6月に凍らせて飲む「リポビタン アイススラリー」を発売した。冷たいだけでなく、クエン酸や汗をかいた時に失われる塩分も含有し、猛暑日が続く中、熱中症対策品として売れ始めている。さまざまな消費者の用途や目的に応じた商品をラインナップしている。
もともと栄養補給の有効成分タウリン配合の「リポビタン」はアンプル剤と錠剤だった。これを味にこだわって改良し、100ミリリットルボトル入りのドリンク剤「リポビタンD」が誕生した。
タクシーの初乗りが80円だった当時、リポビタンDは150円と高価だったが、ドリンク剤の服用感が高度経済成長という時代背景とマッチして売り上げを伸ばした。「薬を冷やす」発想がまだなかった頃で、ドリンク剤を冷えたまま販売する「冷蔵ストッカー」を日本で初めて導入。その後、前面がガラス扉の縦型冷蔵ストッカーも開発し、斬新な販売手法は消費者に支持された。
また、人気のプロ野球選手・王貞治氏をテレビCMに起用したことも起爆剤となった。その後も、「ファイト一発」など時代に合わせたインパクトの強いCMで、さまざまな世代で認知度を高めてきた。
【国ごとに味変】
現在、年間8億本以上を生産し、中国、タイなどの東南アジアを中心に12カ国で販売している。国ごとの好みに合わせて、少しずつ味を変えている。
ドリンク剤としては現状で22種類あり、ビタミンやカルシウムなどを配合し、幼児の栄養を補給する「リポビタンDキッズ」、糖類ゼロでカロリーを6キロカロリーに抑えた「リポビタンファイン」などがある。
【新たな切り口】
19年からはアスリートや運動をする人向けに「for スポーツ」シリーズを展開。同シリーズ内で、そのまま飲めるパウダータイプ、運動時の栄養補給ができるゼリー飲料を商品化した。さらにアイススラリーも投入し、新たな切り口で消費者を飽きさせない戦略だ。
近年はゼリー飲料などドリンク剤にとらわれないラインアップを拡充しているが、「今後も生活者が選択しやすいプロダクト開発を行い、多くの人に手に取ってもらえるように取り組む」(大正製薬)としている。