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続・続ジャパンディスプレイは本当にシャープの液晶事業が必要なのか

アイフォーンが有機ELパネル採用。シャープの液晶事業の価値はさらに下がった?
続・続ジャパンディスプレイは本当にシャープの液晶事業が必要なのか

JDIの本間会長兼CEO(左)とシャープ高橋社長

 米アップルが2018年発売のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」への有機パネルの採用を決めたことは、日本のパネルメーカーに戦略転換を促す。

 今後、有機ELスマホの市場拡大が見込まれる中、ジャパンディスプレイ(JDI)は有機ELで先行する韓国2社に追いつくことに加え、既存の高精細液晶での新市場創出が不可欠になる。一方、有機ELパネルで後れをとるシャープはより一層厳しい立場に追い込まれる。

 現状、スマホ向け有機ELパネルのシェアは、サムスン電子が9割超。またLGディスプレイは能力増強のための大型投資を決めた。有機ELパネルで存在感のない日本勢だが、JDIに勝機はある。アップルの独自方式「LTPO」では、JDIが得意とする低温ポリシリコン(LTPS)技術が一つのカギ。また赤緑青を蒸着方式で画素に塗り分ける技術は、同社の母体の一社であるソニーが蓄積してきた。

 アップルは部材の複数社購買を基本とする。現状では有機ELパネルは韓国2社からの調達が有力視されるが、「スマホで正面から競合するサムスンから買いたくないだろう」(調査会社アナリスト)。このため「むしろアップルがJDIにむちを打って有機ELパネルを作らせるのでは」と指摘する。

 JDIはLTPSの高精細液晶に強みを持つ。LTPS液晶は有機ELパネルに比べ高精細化しやすい。フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4Kスマホなどの市場を拡大できれば有機ELパネルと棲み分けられる。

 「アイフォーンでの有機ELパネル採用が決まり、シャープの中小型液晶事業の価値は下がった」と装置メーカー幹部は指摘する。シャープは有機ELパネル量産のめどがたっていない。また今後、液晶需要が弱くなる中、既存工場の稼働率低下が懸念される。

 シャープの中小型液晶事業には官民ファンドの産業革新機構が出資し、再建を図る案が浮上。その過程で工場のリストラに踏み込む可能性が高い。一方、IGZO(酸化物半導体)技術を使った液晶は優位性を失いつつあり、IGZO液晶を生産する亀山第2工場(三重県亀山市)の扱いも焦点となる。
(文=後藤信之)

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日刊工業新聞2015年11月30日 電機・電子部品面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
亀山第2はテレビ向けの有機ELを作るしかないか・・

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