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三菱電機が始める新たな知的財産活動「オープンテクノロジーバンク構想」とは?

三菱電機が始める新たな知的財産活動「オープンテクノロジーバンク構想」とは?

三菱電機の開発会議(イメージ)

三菱電機は2021年度中に特許や製造ノウハウなどの技術資産を整理・統合して対外的に可視化する知的財産活動に乗り出す。「オープンテクノロジーバンク構想」と呼ぶ活動で、環境などのキーワード別に分類・提示し、社外との連携を加速する。デジタル変革(DX)時代は1社で網羅しきれない多種多様な技術が必要だ。知財戦略も独占からオープンイノベーションへ大きくかじを切る。(編集委員・鈴木岳志)

社内外から閲覧

三菱電機は保有する膨大な特許などの技術資産の分類に着手した。環境や脱炭素、モーターなどのキーワード別に分かりやすく整理した上で、21年度中に専用ウェブサイトを立ち上げ、社内外から誰でも閲覧できる仕組みにする。知的財産渉外部長の宍戸由達執行役員は、「知財を起点に社内および社外との連携を加速していくのが基本的な考え方だ」と説明する。

オープンテクノロジーバンク構想は、ベンチャー企業を含む連携先候補との出会いを増やし、共同開発やライセンス供与などの事業機会を創出するのが大きな狙いだ。宍戸執行役員は、「従来は特許権を取得して独占的に事業を囲い込む使い方がメーンだったが、これからは多様な知財を使って『競争』から『共創』へ移行する」と新たな方針を示す。

また、技術資産を“見える化”することで、社内向けに自社の強み・弱みを顕在化する。競争力に直結するノウハウなどの秘匿技術も同時に特定する。脱炭素などの社会課題を踏まえて足りない技術を把握することで、M&A(合併・買収)や研究開発などの経営戦略に活用する。

世界知的所有権機関(WIPO)によると、同社は20年の企業別国際特許出願件数で世界3位となり、日本企業では1位を獲得した。国内有数の技術資産を誇るが、これまでの知財戦略は技術の独占実施・権利行使が中心だった。ただ、構成技術の複雑化するDX時代に入り、1社単独での製品・サービス提供はより難しくなる。

「一つの製品やシステムを実現するにあたって、何百、何千の権利が絡んでくる」と宍戸執行役員は時代の変化を感じ取る。今後のイノベーション促進には他社との一層の連携が不可欠だ。

海外強化も課題

知的財産センターの曽我部靖志センター長は、「DXが当然キーワードだ。AI(人工知能)やソリューション、脱炭素、省エネルギー対応が知財部門として三菱電機の事業を支援できるはずだ」と重点分野を語る。

さらに社外連携以外の課題として海外強化がある。曽我部センター長は「どうしても日本市場が主戦場になっている部分があったが、海外売上高比率も着実に増えている」とその必要性を訴える。今後の知財戦略は事業DXに資する出願活動と社外連携の加速、海外開発・出願の強化という3本柱で構成する。

21年度から新たな知財戦略の下で、自社の成長と社会課題解決への貢献の両立を目指す。

日刊工業新聞2021年7月12日

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