【一覧掲載】経産省が東芝社員など9件採択。「出向起業」って何?
経済産業省は、企業の優秀な人材が外部資金を集め出向状態で起業する「出向起業」支援事業について新規9件を採択した。採択案件は、神姫バスの社員が起業した廃車予定バスの改造事業や、東芝の社員による細胞分析技術の開発事業など。社員は企業に籍を置いた状態で、新たな事業に挑戦できる。
モノづくりに関する起業の場合、上限1000万円、新規事業に必要な試作品開発や起業準備段階の実証などにかかる経費の2分の1を補助する。期間は2022年2月まで。
神姫バス社員が起業したのはリバース(大阪府高槻市)。イベント開催時に喫煙所やキッチン、サウナなどの設置を希望する顧客の要望に合わせ廃車バスを改修し移動式施設として販売する。将来的にはリース契約も視野に入れる。東芝社員はサイトロニクス(川崎市幸区)を設立。容器に入った再生医療用の細胞を観察・解析できる装置を開発する。再生医療用の細胞を作る操作を人が判断し行っているのを自動化し、研究だけでなく製造にも使える技術の開発を目指す。
そのほか、コムシスホールディングス(HD)社員のBlue Farm(静岡県藤枝市)や静岡銀行行員のターンザタイド(東京都港区)などを選んだ。
出向起業により社員は企業に在籍したまま挑戦でき、失敗時のリスクが小さい。出向元企業にとっても、新規事業が成功した際に社員が立ち上げたスタートアップを有利な条件で買収しやすいなどのメリットがある。仮に起業が失敗しても、社員を社に戻し経営の経験を持った幹部候補人材として生かせる。
同事業は20年度から始まり、今回で3回目。8月にも次の新規事業を公募する予定。
日刊工業新聞2021年7月9日