下水処理水からアンモニアを回収。産総研が開発した技術とは?
産業技術総合研究所ナノ粒子機能設計グループの田中寿主任研究員と川本徹研究グループ長らは、下水処理場の処理水からアンモニアを回収する技術を開発した。さまざまな成分が混ざった処理水からアンモニアを選んで回収する。新技術によりアンモニアを分解する活性汚泥槽の負荷を減らせる。アンモニアのリサイクル促進と、下水処理場の負荷軽減につながる。
ヘキサシアノ鉄酸銅をベースとした「KCuHCFナノ粒子」(ナノは10億分の1)と呼ばれるアンモニウムイオンの吸着剤を合成した。結晶格子の中にアンモニウムイオンやカリウムイオンを取り込む性質がある。
下水処理場の消化槽から出るアンモニアが濃縮された脱水分離液を、開発した吸着剤に通してアンモニウムイオンを回収する。脱水分離液には1リットル当たり1000ミリ―1500ミリグラムのアンモニウムイオンが含まれる。このアンモニウムイオンを吸着し、カリウムイオンで排出する。
吸着と排出を200サイクル繰り返しても吸着性能は落ちなかった。下水にはさまざまなイオンが含まれ、吸着剤に強固に吸着されると性能が落ちる課題があった。
下水処理場で受け入れる排水は、アンモニウムイオン濃度が数十ミリグラムと脱水分離液の濃度は2ケタ高い。このまま活性汚泥槽に戻すと負荷をかけることになるため、メタノールなどを添加して微生物が分解しやすくしている。吸着剤でアンモニウムイオンを取り除けると、こうした処理費用を抑えられる。
日刊工業新聞2021年7月7日