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「Future of Work」これから起こる変革が人々の仕事や働き方を変える

2020までに単純労働者は全世界で9,500万人が余剰になる
 いま世界では、産業革命に匹敵する変革が起きると見る向きが強まっている。この変革には、産業革命と同様に痛みを伴うことが予想されており、欧米の国々では政府主導で対策を講じる動きもある。

 ここ数年よく聞かれる、ビッグデータ、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)、3Dプリンター、ロボティクス・・・といった言葉。これらが変革を引き起こす。物理世界とデジタル世界の連動、新しい設計技術と生産技術、そして、製品そのものの役割の変化。各産業のプロセスにおける人間の役割が、激変していく。インターネット革命後も産業界の様相は大きく変わった。しかしここへきて、そのスピードと規模が増しているのだ。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)は今年5月、実業を行う企業として今後の産業界の変化とそれに伴う人々の仕事や働き方がどのように変化するかを予測した「The Future of Work」と題したレポートをまとめた。人々の将来の仕事や働き方を形成する要素に、次の3つを挙げている。

インダストリアル・インターネット


 物理世界とデジタル世界の連動で、これまでにない価値が生まれている。電子センサーやデータ保管がより安価になったことで、ビッグデータ取得が容易になった。同時に、データ解析技術の進展はビッグデータから予知力や洞察力を得ることを可能になった。産業機器が自律的に最適稼働できるようになるなど、劇的なシステムの効率化、最適化が実現されるようになっている。

アドバンスト・マニュファクチャリング


 新しい製造技術や新素材の活用によって、ものづくりの概念が根底から変わっていく。3Dプリンティングのような新しい製造技術は、素早く安価なプロトタイプ制作を可能にする。設計・製造のプロセスが簡素化され、製品化は大幅にスピードアップしている。「規模の経済」は再定義され、生産機能の分散化、小規模製造を行う「マイクロ・ファクトリー」や特注品を効率よく製造する「マス・カスタマイゼーション」といった新しいビジネスモデルが生まれている。

グローバル・ブレイン


 インターネットの普及で世界的に繋がる人間の「集合知」。人々はこのネットワークの中で自分の知識や経験、技能を提供することで、ものづくりへ新しいかたちで参画、貢献していくようになる。企業は「オープン・プラットフォーム」や「クラウドソーシング」といった形で、「グローバル・ブレイン」の世界的な人材プールに存在する潜在的な創造性を活用し、イノベーションを起こしやすくなるはず。

 こうしたトレンドは、人々を単純労働から解放し、よりクリエイティブで対人能力が求められる作業など、人間特有の能力を活かした仕事へと向かわせる。別の言い方をすれば、人間と機械との間で仕事の再配分が行われるため、一部の職が消滅したり、一部のスキルが役立たなくなったりする事態になる。

 マッキンゼーは次の推計を発表している。2020までに…
 ●単純労働者は全世界で9,500万人が余剰
 ●発展途上国では中度技能労働者が4,500万人不足
 ●高度技能労働者は全世界で4,000万人不足

(出所マッキンゼー・グローバル・インスティテュート、2012年)

 こうした流れに布石を打とうとする国々もある。たとえば英国では今年、政府外郭団体であるUK Commission for Employment and Skillsが「The Future of Work : jobs and skills in 2030」と題した調査レポートを発行。テクノロジーの進化や企業間コラボレーションの現状と見込みをまとめ、今後求められる労働者の新しいスキルを解説している。ドイツ政府は早くからIoTに着目して「Industry 4.0」プロジェクトを推進、2013年には2億ユーロ(約280億円)を投資して新ビジネスモデルの創出を急いでいる。
 
 国と企業、両方の競争環境が変わる。新たな技術に投資したり組織や経営手法を適応させたりすることが求められている。教育の世界でも、様相が激変する産業界で必要になるスキルを学生たちに身に着けさせなければならない。

 従来のあり方が崩壊する労働市場では、その衝撃を和らげるための教育や再訓練、社会保障制度が必要だ。変化はチャンス。来たる変化の本質を深く理解し、それぞれの立場でアクションを起こす。将来の成長機会は、このスピードにかかっている。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
従来の強みがオセロのように「弱み」にもなる時代。日本は三つの大きなトレンドに対応しないと。まだ間に合う。

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