富士通が続々と招き入れている“DX請負人”たちの正体
富士通は、外資系ITベンダーからの人材登用をテコにデジタル変革(DX)を加速する。2019年に時田隆仁社長が就任して以降、外資系出身者らが続々と富士通に入社し、“DX請負人”として活躍している。20年度までに執行役員常務や子会社社長などで計5人を経営幹部に登用。21年度は、6月に執行役員常務に就任した日本マイクロソフト出身の高橋美波氏(56)に続き、7月には米IBM出身のヴィヴェック・マハジャン氏(52)が執行役員専務に就任する。(編集委員・斉藤実)
マハジャン氏は、直近がIBMクラウド担当のチーフ・レベニュー・オフィサー(CRO)を務めた実力者。もともとは日本オラクルの常務執行役員ミドルウエア担当を経て、10年に日本IBMに入社。海外進出する日本企業を支える製品やサービスの営業担当執行役員として活躍し、取締役専務執行役員にまで上り詰めた。その実績が評価され、19年にIBM本体に移籍。グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)部門テクノロジー・サポート・サービスのゼネラルマネージャーを経て、IBMクラウド担当CROとして辣腕(らつわん)を振るった。マハジャン氏は富士通では最高技術責任者(CTO)となり、富士通研究所との連携も含め、富士通全体の技術戦略を統括する。マハジャン氏は日本好きで、日本語が堪能なインド系のIT人材。ソフトウエアに関する知見やIBMで培った多様な経験をベースに、富士通のグローバル展開に新風を吹き込む格好だ。
高橋氏は、出身母体のソニーでは民生機器営業部門を担当し、北米や欧州などの海外拠点で活躍。ソニーアメリカ副社長を経て、14年に日本マイクロソフト入社。コンシューマー&パートナーグループ担当執行役員常務として手腕を振るった。富士通では執行役員常務グローバルソリューション部門デジタルソフトウェア&ソリューションビジネスグループ長に抜てきされた。
外資系育ちの傭兵(ようへい)部隊は続々と増えていて、DX推進のカンフル剤となっている。
富士通以外でも、IT・電機業界では外資系からの人材登用などで新しい“DNA(遺伝子)”を取り込む動きが相次いでいる。既存の仕組みを変えるために、既存の組織や人間関係にしがらみのない外部人材の活用は常とう手段ともいえる。ただ、それには副作用も付きものだ。既存社員のモチベーションを高め、会社へのロイヤリティー(愛社精神や思い入れ)を堅持するための気配りも欠かせない。