燃焼ガスからCO2を高濃度で取り出す、九州大が開発したゲル薄膜がスゴイ
九州大学の星野友准教授と研究当時に大学院生だった行部智洋氏らは、工場などで排出される燃焼ガスから窒素を分離し、二酸化炭素(CO2)を高濃度で取り出せるゲル薄膜を開発した。一度の膜透過で大気中に0・04%にとどまるCO2濃度を95%まで濃縮できる。スプレー塗布が可能で乾燥が不要。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向け、低コストCO2回収技術として期待される。
多孔質膜上に厚さ数百ナノメートル(ナノは10億分の1)のゲル薄膜を作る。カルボン酸を持つ高分子にアミンを含ませてゲルにする。するとCO2が炭酸として溶け、アミンと中和して塩になる。ポンプで吸引するとCO2分圧が下がり膜からCO2が放出される。一度ゲルに含まれる水溶液に溶ける過程を経るためCO2のみを通して窒素は通さない。
ガス分離性能を表す単位のGPUは1270で、選択性を表すCO2と窒素の透過比は2380。選択性が高いことから、窒素を除くために何度も膜を透過させる必要がない。
工場などで排出される燃焼ガスは大量の水分を含む。そのため分離膜の種類によっては乾燥工程のコストがかかる。開発したゲル薄膜は水分を吸収するため乾燥が不要。水蒸気によってCO2の分離濃縮が妨げられない。多孔質膜の細孔をゲルが全てふさぐように膜を作るプロセスも開発した。微細な蛇腹構造などで表面積を大きくしてもスプレー塗布により対応できる。
日刊工業新聞2021年6月22日