日野自が開発するEVトラック、作業者の「きつい」イメージ払拭なるか
車両の電動化がトラックの開発思想に変化を起こしている。日野自動車が2022年夏頃に発売する小型電気自動車(EV)トラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」。従来のエンジン車とは違う空間作りが可能になるため、顧客に合わせた設計を追求した。また物流現場が直面する人手不足などの課題に即応するため、開発期間短縮にも力を入れる。(日下宗大)
EVトラックを投入する以上、エンジン車とは違った付加価値が必要になる。日野自は日野デュトロ Z EVの開発に当たり、EVだから実現できる顧客目線にこだわった。
最大の特徴は、ウォークスルーと床面地上高約40センチメートルという超低床構造だ。実現のためシャシフレームから駆動ユニットまで新規開発した。
作業者は運転室と荷室を直接行き来でき、荷物の積み降ろしでも肉体的な負担が減る。“キツい”という印象を払拭(ふっしょく)できれば物流現場の人材が増える一助にもなる。
駆動電池の容量は40キロワット時にした。航続距離は100キロメートル程度を想定する。日野自の東野和幸BR EV開発推進室室長は「小型トラックの稼働パターンを考えれば、大きな電池は必要ないと判断した」と明かす。13年の実証EVはパウチ型電池を採用したが、今回は角形電池に変更した。普及する角形を採用することでコストを極力抑えるようにした。
これまで小型トラックの開発では走行性能や最大積載量などの機能を重視してきた。しかしEV小型トラック開発では「顧客の稼働全体を念頭に置き、その改善にどう貢献できるか」(東野室長)に力点を移した。
また「顧客の課題を早期に解決する」(同)ことも開発テーマにした。物流の事業環境は刻々と変わり、トラックの顧客である物流会社のニーズも変化する。通常、トラックの開発期間は5年前後。それだと開発初期の開発コンセプトと、完成時期の顧客ニーズがズレてしまい、魅力の低い商品に仕上がってしまう懸念があった。
日野自は13年に小型EVトラックの実証を始めるなど、実用化への布石は打っていた。その知見を受け継ぎ19年、EV開発のプロジェクトチームを新たに立ち上げた。日野デュトロ Z EVは3年で完成させる計画だ。
今後、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けて小型EVトラックの役割は増す。日野自の下義生社長はEVの使い勝手の良さを追求するため「顧客の仕事にさらに寄っていく」と力を込める。
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