ソニーGが深層学習向け演算器を開発、エネルギー効率は最高レベル
ソニーグループR&Dセンターの齋藤大輔デバイスエンジニアらは、エネルギー効率が同種のチップで最高レベルとなる深層学習(ディープラーニング)用演算器を開発した。メモリーに使われる強誘電体ゲート電界効果トランジスタ(FeFET)を深層学習の積和計算に用いるのが特徴。消費電力が小さく、自動車や携帯端末など電力の限られる装置で深層学習の推論を行う用途が開ける。
深層学習は大量の掛け算(積算)と足し算(和算)を繰り返す。この積算をFeFETの0/1で、和算は複数の演算素子を流れた後の電流値の合計で演算する。演算素子の抵抗部を窒化チタンと二酸化ケイ素で作製。数メガオーム(メガは100万)の電気抵抗が得られ、電流値が安定した。
この演算素子でアレイを作り、簡単なパターン識別ができることを確認。このデータを基に、演算に必要なエネルギー効率をシミュレーションしたところ1万3700TOPS/ワットだった。FeFETは不揮発性メモリーに用いられる素子で、0/1を記録するための電力を消費しない。
深層学習の演算に最適化された素子は、人工知能(AI)チップとして開発競争が起きている。ソニーグループは2020年に22ナノメートル(ナノは10億分の1)技術で1万5000TOPS/ワットのAIチップを開発した。ただ、メモリーが揮発性だった。今回、不揮発性にすることで、より消費電力を抑えられる。
詳細は13日からオンラインで開かれる半導体技術と回路の国際会議「VLSIシンポジウム」で発表する。
日刊工業新聞2021年6月2日