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激変・電子部品商社!UKCと加賀電子が経営統合に向かう業界の課題

国内市場縮小、海外進出にリソース結集へ。さらなる再編必至
 UKCホールディングス(HD)と加賀電子が2016年10月1日付をめどに経営統合することで基本合意した。売上高は合わせて5358億円となり半導体・電子部品商社でトップクラスの企業が誕生する。国内市場が縮小し、主要顧客の主戦場が海外へシフトするなど商社を巡る事業環境は厳しくなっている。両社の製品や販路を生かし、顧客への対応力強化や海外展開を加速するという。

 UKCはソニー製の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーが主力商材で、電子機器メーカーとの取引実績が豊富にあるほか、近年は自動車向けの開拓を積極化している。一方、加賀電子はEMS(電子機器製造受託サービス)事業を展開し、業容を拡大してきた。

 経営統合後は、両社の強みを融合させる方針。商品ラインアップを拡充し、顧客への提案力を高めていくほか、両社の海外拠点を有効活用する。業務面では国内外の拠点における物流網を共有、コスト削減につなげる。

海外でも日本並み顧客をサポート目指す


日刊工業新聞2014年5月5日付


 半導体・電子部品商社各社が海外に進出した日系顧客へのサポート体制を拡充している。国内市場の縮小を背景に自動車メーカーなど主要顧客の主戦場が海外にシフトしているためで、海外でも顧客の要望に迅速に応えることで収益性向上を狙う。ただ現地には有力な商材や世界的な販売網を持つ外資系半導体商社の影響力は大きい。日本の商社ならではのきめ細かく付加価値の高いサービスで差別化し、いかに現地で需要を取り込めるかが今後の業績を左右するカギになる。

 「ユーザーの要望があれば、明日にでも海外に拠点をつくって世界に飛び出せる」。丸文の水野象司社長は自信たっぷりに断言する。同社は4月、提携する米半導体商社のアローエレクトロニクスとの合弁会社を通じて、インドネシアに現地法人を設置した。現地に進出する日系自動車関連企業に製品供給や技術サポートを提供。地域に根ざした営業で顧客の要求に迅速に応えるのが狙いだ。

 同社は車載向けビジネスの拡大を経営目標に掲げており「当面は毎年2ケタ成長を目指す」(水野社長)計画。このため今後は米アローが持つ世界58カ国に点在する営業網を利用して、地域密着型営業を徹底する。丸文のほか、リョーサンが2012年にインドとドイツに、菱電商事が13年にインドネシアに拠点を設置するなど、日系企業の需要を取り込もうと競争が激化している。

 各社が一斉に海外市場攻略に動くのは08年秋のリーマン・ショックを境に主要顧客だった国内大手電機メーカーの業績が低迷し、商社を取り巻く事業環境が大きく変化したためだ。アプリケーション別の売り上げ構成もパソコンやテレビなどの民生機器向けから車載や産業機器向けの比重が高まり、自動車メーカーを中心に、現地調達、現地生産が進む。

 国内市場の縮小でルネサスエレクトロニクスなど仕入れ先である日系半導体メーカーの再編や、外資系半導体メーカーによる商権の見直しが頻繁に起こり、近年は単独では生き残れないと判断した商社のM&A(買収・合併)などが相次いだ。

 海外に商機を見いだす日本の商社。ただ、世界最大手の米アヴネットなど巨大な資金力と販売ネットワークを持つ外資系半導体商社や地場商社を活用する日系企業も多い。ある外資系半導体商社日本法人の担当者は「特に自動車市場が拡大するメキシコやブラジルなど中南米などに進出する日系自動車関連企業の需要を取り込むチャンスが訪れている」と、国内営業を強化している。

 丸文が米アローと提携していることからも分かるように、日本の商社が海外拠点網を拡充すればすぐにビジネスが舞い込んでくるというわけではないというのが現実だ。

現状打破へとにかくソリューション力


 ではこの現状をどう打破するのか。「とにかく“ソリューション力”の向上につきる。顧客が抱える課題は何かを徹底的に追求して、解決できれば自然と結果がついてくる」。菱電商事の山下聰社長は5年後を見据えた中長期的な経営ビジョンを力説する。

 同社は4月、国内外全拠点に製品の評価試験やビル設備の遠隔監視などさまざまなソリューションサービスを提案する専門人材を配置した。例えば顧客の代わりに中国など地場メーカーから調達した部品の全数チェックを担うなど、一般的な商社が取り組まないような一歩踏み込んだサービスを展開することで顧客とのパイプを太くし、取引拡大を狙う。15年度が最終年度の中期経営計画では海外売上高比率を12年度の24・1%から35%以上に引き上げる計画だ。

【戦略見直し】

 黒田電気は3月に南開工業(神奈川県南足柄市)が持つ北米子会社を買収すると発表。北米においてシートベルトなどに使われる樹脂成形部品を生産し、現地の自動車関連工場に部品を供給する体制を整える。これまで北米に販売会社はあったが、生産拠点設置は初めて。同社は過去にベトナムの自動車部品メーカーを買収するなど自動車部品の製造部門を強化している。自動車販売台数が好調な地域で旺盛な需要を取り込み、自動車関連事業の拡大につなげる。

 一方、ソニーの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーが主力商材のUKCホールディングスは、中国でEMS(電子機器の受託製造サービス)事業を展開。東莞の自社工場や深セン、蘇州の協力工場を活用して液晶モジュールなどを受託生産し日系企業に収める。

 福寿幸男社長は「これからは単品売りではなく、顧客の開発負担や製品差別化に貢献できるモジュール品を提案できるようにエンジニアリング力を強化したい」と先を見据える。

 実際、いくら外資系半導体商社の力が強いとはいえ「一度、地場商社を使ったが、コミュニケーションがうまくとれずに戦略を見直した。やはりなじみのある日本の商社が近くに居てサポートしてくれるのはとてもありがたい」(大手部品メーカー担当者)との声も根強い。顧客のニーズが多様化する中で、日本の商社が果たすべき役割は十分にある。

 「ディスカウントストアのように製品を並べておけば、黙っていても顧客が選んで買ってくれる時代は終わった」(山下菱電商事社長)。厳しい競争環境の中で、海外でも日本並みの体制で顧客をサポートするとともに使い勝手がよく他社と差別化できるユニークなサービスを提供できるかが、勝ち残るための競争軸になりそうだ。

車載システムが競争軸に


日刊工業新聞2015年5月6日付


 自動車、産業機器を新たな収益源にしようと攻勢を強める電機・電子部品メーカー。この動きに呼応し、電子部品・半導体商社各社が、センサーなどの新商材発掘やメーカーの開発を支援する取り組みを強化している。車分野ではIT化や先進運転支援システム(ADAS)、産業機器分野はモノのインターネット(IoT)を使った新しいモノづくりに対応することがテーマだ。

 自動車は燃費向上と並行し、ADASなどドライバーの運転を支える各種車載システムが競争軸の一つになった。他社と差別化を図るため車メーカーや電装品メーカーが車載システムの研究開発に経営資源を集中させる中、商社は国内外で商材発掘や開発支援体制を充実させ、安定成長が見込める車分野のビジネス拡大を急ぐ。

 丸文は2014年度に車に特化した営業本部を発足したほか、米国に新商材を発掘する駐在員を置いた。菱電商事も新商材を発掘するための担当者を海外の拠点に常駐させる。特に欧米では、センサーや画像処理ソフトなど有力商材や技術を持つ企業が多く、専門人材を現地に置くことで、有力な商材を早期に獲得するのが狙い。

 一方、UKCホールディングスは、ADAS向けにソニー製の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーの提案を始めた。1次部品メーカー(ティア1)や2次部品メーカー(ティア2)が売り込み先で、各社への提案力を高めるために技術営業職(FAE)を順次増員する。

 センサー単品だけでなく、モジュール化への対応や画像データ取得後の信号処理といった、周辺技術を提供するなどして開発サポートを充実させる。スマートフォン向けがメーンだったCMOSイメージセンサーを自動車分野にも横展開し、新しい収益源にする。

産業機械分野でIoTは戦略打ち出す


 産業機器分野ではIoTを活用した新しいモノづくりに注目が集まっている。FA機器やロボットにセンサーを組み込み、ネットでつないで国内外工場の生産状況をリアルタイムに管理。データを共有し、生産を最適化するのが目的だ。

 独では国策で「インダストリー4・0」が、米国ではGEが主導する「インダストリアル・インターネット」が本格始動。日本でもTDKやオムロンといったメーカーがIoTを工場に導入する計画を打ち出し、国際競争力を一段と高めようとしている。

 IoTの本格普及を前に商社は独自戦略を相次いで打ち出す。菱電商事は画像認識用のカメラと無線識別(RFID)タグを組み合わせて、品質管理やトレーサビリティーなどの効率化を図るシステムの提案を始めた。先月独で開催された産業見本市「ハノーバー・メッセ」のブースでも紹介。日系の食品やプラントメーカーなどとの商談が進んでいるという。

 丸文は複数のセンサーと制御用ICをまとめた評価ボード「クアトロ」の供給を始めた。IoTを使った生産システムの構築などに役立つ。水野象司社長は「(評価ボードの)引き合いは非常に強く、IoTへの関心の高さが年々強まっている」と指摘。商機を着実につかもうと、国内外の市場動向を注視する。
日刊工業新聞2015年11月19日記事に大幅加筆・修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
マクニカと富士エレクトロニクスが経営統合し今年4月に国内最大の半導体商社が誕生した。UKCと加賀電子の統合会社はそれを売り上げ規模で上回る。半導体商社の海外展開は10年前から課題とされていたが、国内商圏に甘えてきた。それもいよいよ持たなくなった。米国も90年代までは半導体商社が乱立されたが、90年代に入りM&Aが進み、メガディストリビューターが誕生した。日本と米国では産業構造が違うため単純に比較できないが、商社の再編は20年後れ。 日系の半導体メーカーは弱体化したが、電子部品メーカーのプレゼンスは年々高まっている。電子部品と半導体の機能が徐々に近づいていく中で、商社は商圏ビジネスから本当の顧客ビジネスに転換しないと生き残れない。

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