NTTドコモと富士通が共同展開、「顔データなしで不審者検知」 の仕組み
【事故の未然防止】
「事前の顔データ登録がなくても、危険な行動をする可能性を数値化できる。未知のトラブルを未然に防止可能だ」―。NTTドコモ5G・IoTビジネス部の織田敦先進ソリューション第一担当課長は、富士通と共同で展開する「不審者検知ソリューション」の特徴をこう説明する。
同ソリューションは、人の行動や動作を映像から分析・数値化し、不審な行動を起こす可能性のある人物を検知する。「不審者に多い(身体の)振動パターンがある」(織田担当課長)といい、解析所要時間は2―3秒。不審な行動を検知した場合、その旨を警備員が持つタブレット端末に知らせる。検知された場所に警備員が駆けつけるなどすれば、犯罪や事故の未然防止につながる。
【顔認証と競合】
セキュリティー関連製品市場には、既に顔認証技術を活用したシステムが存在する。だが、こうしたシステムでは、犯罪歴を持つ人物の顔をあらかじめ登録しておく必要が出てくる。ドコモの不審者検知ソリューションは事前の顔データ登録が不要という点で優位性があると言えそうだ。
ただ、同ソリューションの精度の問題で、不審な行動だと判定される事例が必要以上に多発する懸念はないのか。この問いに織田担当課長は「不審者とみなす基準は顧客によりさまざま。要望を踏まえて、しきい値(境目となる値)をチューニングしている」とする。また、判定機能は2014年に行われたソチ冬季五輪で大規模な実証実験を実施済み。不審者と検知した人のうち92%は実際に何らかの違反行為があったという。
第5世代通信(5G)を活用すれば、さらなる精度向上も見込める。「高速大容量でデータを送信でき、4Kカメラなどの高画質映像も扱える。従来のカメラよりも広域・高密度のため、不審者の検知が容易になる」(織田担当課長)。
【警備で競争激化】
ドコモは今後の受注目標を明らかにしていないものの、公共交通機関や商業施設などからの引き合いがあるとする。今後の拡販に向け、現在はオンプレミス(自社保有)型で提供している同ソリューションを、21年度中にクラウド化する計画。顧客の初期費用を下げることで導入しやすくする狙いだ。
通信業界ではKDDIも5Gを活用した警備の実証などに力を注いでおり、この分野での競争が激化する可能性がある。ドコモの織田担当課長は「いかにコストをかけずに精度良く不審者を検知できるかが競争軸になる」と気を引き締める。(編集委員・斎藤弘和)