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日銀・未達の物価目標から考えるこれまでの広報戦略の限界

日銀・未達の物価目標から考えるこれまでの広報戦略の限界

会見する黒田総裁(代表撮影)

日銀は27日に開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和の継続を決めた。2023年度までの経済と物価見通しを公表し、21年度の実質国内総生産(GDP)を1月の予想から0・1ポイント引き上げ、前年度比4・0%増とした。22年度は同0・6ポイント引き上げの同2・4%増とする。一方、物価は23年度でも同1・0%の上昇にとどまる。13年から早期実現を目指す消費者物価の前年比上昇率2%目標は、10年経て未達ということになる。

23年度も物価目標未達

日銀は同日の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で見通しを示した。足元は製造業の収益が改善し設備投資の持ち直しがある。「世界経済の回復傾向がかなり明確になった」(黒田東彦総裁)とみて、22年度を中心に上振れすると判断した。コロナ禍が収束する前提の23年度の実質GDPは前年度比1・3%増と予想した。

物価は21年度にコロナ禍による下押し圧力と、携帯電話通信料の値下げ影響を受けて同0・4ポイント引き下げ同0・1%の上昇とした。2%の物価安定目標を達成しないことについて黒田総裁は「時間がかかっていることは残念だ」とし、「必要となればちゅうちょなく追加的金融緩和を行う」と述べた。

金融政策は金融市場調節で長期・短期の金利操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と、日銀が世の中に直接的に供給する資金「マネタリーベース」の拡大方針を続ける。

日刊工業新聞2021年4月28日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
「2年で2%」という物価目標は結局10年経っても達成できない見通しとなった。もう2%の旗を下ろしたらどうかと個人的には思っているが、それはさておき、今回は日銀の広報のあり方について考えてみたい。日銀が2%の物価目標を達成するために人々の期待(マインド)に働きかける量的・質的金融緩和を導入したのは2013年4月。その年に実施した「生活意識に関するアンケート調査」(9月調査)では、日銀が2% の物価目標を掲げていることを知っていると答えた人は36.9%、見聞きしたことがないと答えた人は21.7%だった。つまり、この時点では知っている人の方が多かったわけだ。これが今はどうか。2021年3月調査では知っている人は18.1%と過去最低を更新した一方、見聞きしたことがない人は51.6%と量的・質的金融緩和を導入して以来、初めて50%を超えた。なぜか。導入直後はマスコミも「異次元緩和」や「黒田バズーカ」といった文言を使って大々的に報じたため、人々の目に触れる機会も多かったが、その後は報道の扱いも小さくなり(かつマスコミの影響力も以前ほどではなくなったため)、人々が知る機会を失っていったというのが実態だろう。人々が2%目標を知らないのにどうやって期待に働きかけるのか。日銀はこれまでマスコミを通じた広報を重視してきた。それは一つのやり方としては間違っていないが、これまでと同じやり方では人々に届きにくくなっているということを、この調査結果は物語っているのではないか。今は新しいメディアも続々と生まれている。これまで届かなかった層にリーチするためにどうすればいいか、考える時期に来ていると感じる。

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