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「電力と文化」の異質な組み合わせがもたらす思わぬ効果

伝統芸術支える
「電力と文化」の異質な組み合わせがもたらす思わぬ効果

新潟県内最大の踊りイベントとなった「にいがた総おどり祭」を企画・プロデュース

2020年末、電力の卸売価格が急騰した。サイト(新潟市中央区)は1月、電気料金の上昇に困惑した消費者の無料相談窓口を開設したところ、再生可能エネルギー由来電気の利用者ほど高騰に悩んでいた。同社の能登剛史社長は「今回の事態で『再生エネはやっぱり高い』など、負のイメージが生まれないでほしい」と祈る。

サイトの本業は文化活動を支援するイベントプロデュース業。2002年に初開催した「にいがた総おどり祭」をきっかけに能登社長が03年に設立した。地域から文化が消滅することへの危機感が動機だった。

全国から伝統芸能を集めた祭典も企画し、新潟市内で開催

全国を見渡すと活動費用を企業の協賛金や行政の補助金に依存する行事や伝統芸能がある。かつては成り立っていたが、地域経済が衰退すると支援は先細りとなり、活動が停滞してきた。「過去の方法は社会的に合わなくなった。現代版の経済的な仕組みが必要だ」(能登社長)と考え、伝統芸術などをビジネスとして支えてきた。

電力に着目

そして電力に着目するようになった。再生エネ由来電気を販売する新電力3社と連携し、契約者が電気代の1%を文化活動に寄付できる仕組みを整えた。契約した企業は自社の二酸化炭素(CO2)排出量を削減しながら、再生エネ普及や地域の文化活動にも貢献できる。電気代の支払いは通常業務なので、企業は追加負担を抑えて社会貢献を継続できる。電力高騰の相談窓口を開設した1月は、サイトが3社の代理店となって営業を始めた直後だった。

持続可能に

能登社長は「文化がなくなった地域には人が来る理由がなくなる。人が集まらなければ地域経済は縮小し、地元企業も持続可能でなくなる」と文化と経済の接点を説く。創業以来、能登社長と一緒に行動してきた岩上寛副社長も「持続可能なモノを生み出すプラットフォームを作りたい」と展望を語る。「電力と文化」の異質と思える組み合わせは、地球環境も地域企業も持続可能にする“現代版の経済システム”だ。

日刊工業新聞2021年4月15日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
経済が文化を応援するというのが定番だったと思います。税収などで文化財を保護したり、文化的イベントを催したりと。能登社長のコメントを解釈すると、文化があることで経済も良くなる。確かに、クラブスポーツも地域に根付くと、人が集まり、スポンサー企業も現れます。再生エネ電気を使いながら、地域文化を応援できる電気メニューが増えてほしいと思いました。

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