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石油開発会社も逆風!原油市況、先見えず

足元の業績は下振れ。「日の丸ガス田」は生産スタートが遅れる
 石油開発各社にとって厳しい事業環境が続いている。原油安で原油や天然ガスの販売価格が下がったことなどから、大手3社の2015年4―9月期連結決算(JX日鉱日石開発は単体)はいずれも全利益段階で減益となった。通期も3社そろって、各利益段階で減益または赤字になる見通しだ。原油相場は底を打ったとの見方が強いが、経済制裁解除に伴うイラン産原油の輸出拡大など不確定要素も多く、予断を許さない状況が続きそうだ。

 4―9月期の原油の国際相場は、ドバイ原油でバレル当たり平均約57ドルと、前年同期の105ドルに比べて半分程度まで下がった。これに伴う販売単価の下落で、国際石油開発帝石では原油・天然ガスの販売額が、前年同期に比べて3755億円下押しされた。JX日鉱日石開発も原油安の影響で、経常利益が520億円削られた。

 3社はこれを受けて通期の業績予想を下方修正した。前提となる原油相場の見通しを引き下げたためだ。

 原油安の背景には中国をはじめとする世界経済の減速や、北米産シェールオイルの生産増大に伴う供給過剰感がある。3社は設備投資の抑制や採算性が低い油田・ガス田の売却といったコスト低減策で逆境を乗り切りたい意向だが、原油相場の大幅上昇は当分見込めそうにない。

 イラン産原油の輸出拡大が予想されるほか、石油輸出国機構(OPEC)の減産決定が12月の総会でも見送られるとの想定から供給過剰感が依然強く、石油開発各社は当分、強い逆風にさらされそうだ。

豪のLNG開発、17年に生産開始


日刊工業新聞2015年9月12日付


 国際石油開発帝石(INPEX)は11日、操業主体として豪州沖合で進めている大型ガス田開発「イクシスプロジェクト」で、液化天然ガス(LNG)などの生産開始時期が2017年7-9月期に遅れると発表した。従来は16年末を予定していた。天然ガスなどを採取して1次処理を施す洋上施設の建造が遅れているため。一方でLNGの生産見込み量を、従来の年間840万トンから同890万トンに上方修正した。

 生産開始の遅れに伴い、投資額も従来計画の340億ドル(約4兆円)から1割程度増える。ただ生産開始から安定生産移行までの期間は2-3カ月と、従来計画より5カ月ほど短縮できるという。

 同事業ではINPEXが62%強の権益を持ち、仏トタルや東京ガス、大阪ガス、関西電力なども参画している。修正前のLNGの年間生産量840万トンは、日本の年間LNG輸入量の1割に相当する。うち約7割を日本に供給することが決まっており、LNGの安定調達に対する貢献が期待されている。

日刊工業新聞2015年11月12日エネルギー面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 JXホールディングスと東燃ゼネラルの経営統合交渉が進めば、JXは傘下の石油精製・販売「JX日鉱日石エネルギー」や石油・天然ガス開発を担う「JX日鉱日石開発」などと東燃ゼネラルの各部門を統合させる方向だろう。  一方、 国際石油開発帝石が将来の収益源として期待するイクシス。1バレル=40ドル台の油価が続いても収益性には問題ないとしており、当初の計画では損益分岐点は原油1バレル30ドル台と想定された。ただ今回の生産開始の遅れにより費用負担が増え、損益分岐点が上がり期待収益を下回る可能性が高い。

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