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日産系VSホンダ系 部品メーカーの「稼ぐ力」

業績好調のうちに再編に乗り出す可能性は?
日産系VSホンダ系 部品メーカーの「稼ぐ力」

ホンダ・八郷社長(左)と日産・ゴーン社長

 先日はトヨタ自動車系部品メーカーの業績まとめを公開したので、今回は日産自動車系とホンダ系。日産は正確には「ケイレツ」ではないが、まだ資本の入っている会社もある。

 まずは日産、ホンダの今期(15年度)の販売計画が15年4ー9月期の決算発表でどのように修正されたか。日産は世界販売計画を従来の555万台から550万台に引き下げた。内訳は、北米を198万台(前回予想192万台)と上方修正する一方、欧州を77万台(同79万台)、中国を125万台(同130万台)に引き下げた。日本は60万台の計画を据え置いた。

 ホンダは世界販売計画を473万台(同471.5万台)に引き上げ。日本は69万台(同74万台)と大幅に下方修正、そのほ北米191万台(同189万台)、アジア170.5万台(165.5万台)、欧州17.5万台(同16万台)。

 世界販売と生産は完全に一致しないく、日産、ホンダ以外への供給もあるが、部品メーカーの業績をみる目安になる。部品各社の業績は堅調だが、逆に今期、収益が拡大傾向にない会社は厳しい。短期では中国市場の動向、またパリで発生したテロによる世界経済への影響、中期的には各自動車メーカーが取り組み始めている設計改革にどう対応していくかで、収益格差が出てくるだろう。その前に事業基盤の強化を目指す再編もありえる。

日産系は8社すべてが営業増益見込む


 日産自動車への供給が多い部品メーカー8社(表1)は2016年3月期連結業績で全社が営業増益を見込む。北米の自動車販売が好調な日産など日系完成車メーカーの受注が伸び、メキシコを含めた米州事業の拡大が全体を押し上げる。カルソニックカンセイ、河西工業、ヨロズの3社は海外事業の増加などを反映し、通期の営業利益予想を上方修正した。

 米州ではカルソニックカンセイが日産の増産などを受け、15年4―9月期の米州事業の売上高が前年同期比22%増の2073億円となり、「上期として初めて2000億円の大台を超えた」(森谷弘史社長)。こうした米州事業の拡大や円安による為替影響などを反映し、通期の連結業績では売上高と各利益段階で過去最高を見込む。

 ヨロズは15年度からメキシコの第2生産拠点が本格稼働。ホンダやマツダなど「日産向け以外の生産も拡大」(佐草彰取締役専務執行役員)し、好調な米国と合わせて米州事業が全体をけん引する。

 市場が減速する中国では鬼怒川ゴム工業が日産の増産や日産以外の新車拡販効果により、同国を含むアジア事業で15年4―9月期に増収営業増益を確保。中国については下期も当初の計画通り前期と比べ「伸びていく」(同社)と見る。

ホンダ系、一部で生産国内回帰も


 ホンダ系部品メーカー11社(表2)の2015年4―9月期連結決算は7社が営業増益となった。日本市場は新車販売の低迷による影響を受けたが、北米や中国市場でホンダの4輪車販売が増え、受注増につなげた。為替換算のプラス要因もあり、16年3月期は10社が営業増益を確保する見通しだ。

 4―9月期決算の発表に併せて、ショーワ、日信工業、八千代工業、ユタカ技研、エフ・シー・シーの5社が通期の営業利益予想を引き上げた。日信工業は、4輪用ブレーキ関連事業をスウェーデンのオートリブとの合弁事業に移行することに伴い、会計処理方法を変更。これにより通期の売上高見通しが従来予想比540億円減となった一方、営業利益見通しは同300億円増となった。

 為替環境の変化などを踏まえ、一部メーカーでは海外から日本への生産回帰が進む。ケーヒンは排ガス再循環装置(EGR)バルブ、スロットルボディーに続き、近く4輪用電子制御ユニット(ECU)生産の一部をタイから日本に戻す。

 経営基盤の強化に向け、ホンダ以外の完成車メーカーからの受注拡大に向けた取り組みも加速している。エフテックは米ゼネラル・モーターズ(GM)との取引拡大を視野に、米国や中国、メキシコ工場の生産能力を拡充する計画だ。
日刊工業新聞2015年11月11日/12日自動車面に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
トヨタはエンジン周り、変速機、ブレーキなどパワートレーン関連の部品メーカーの再編を行った。まだ積み残されたものもある。日産、ホンダ系はどうか。日産系でいうとヨロズや鬼ゴムなどの動向に注目したい。ホンダ系は7、8年ほど前、一度、系列強化・再編に動いている。その時は骨格部品などだった。今後注目のパワートレーン関連でいうと、ショーワ、日信工業、ユタカ技研などか。

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