パナソニックが船舶用衛星通信の米子会社を売却する背景
パナソニックは、米パナソニックアビオニクス(カリフォルニア州)傘下で船舶用衛星通信サービスなどを手がける米ITCグローバルホールディングス(テキサス州)を投資会社の英エイパックス・パートナーズが支援するグループに売却した。売却額は非公表。パナソニックアビオニクスは航空機関連事業を手がけ、今回の売却は長期的な事業見直しの一環としている。
パナソニックは2015年、鉱山や海洋などの資源発掘、船舶向け業務用衛星通信プロバイダーの米ITCグローバルホールディングス(テキサス州)を買収した。当時の買収額は数百億円規模とみられる。パナソニックアビオニクスがITCを傘下に置き、主力の航空機内エンターテインメント機器に加え、事業多角化を狙った。
ただ航空機業界がコロナ禍で落ち込み、パナソニックアビオニクスも事業の再構築に迫られていた。加えてITCと競合する英衛星通信大手インマルサットが19年、エイパックスに買収されたことも、今回の売却につながったもようだ。
パナソニックアビオニクスは従来、開発コストがかさむ大型機向けが主力だったが、コロナ禍で需要減少。一方で中・小型機は国内線やプライベート機などで長期的には増加する見通しで、製品共通化による開発コスト低減も見込める。そのため同社は中・小型機向けに注力するなど、テコ入れを進めている。
日刊工業新聞2021年3月25日