ITの頂点となるマシン!スパコン「富岳」は更なる高い目標を目指す

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理研と富士通が開発したスーパーコンピュータ「富岳」

スーパーコンピュータ「富岳」

日刊工業新聞社が主催する「第50回日本産業技術大賞」の受賞案件が決まった。内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、審査委員会特別賞の4件の詳細を4回にわたり紹介する。

理化学研究所と富士通は2014年度からスーパーコンピュータ「富岳」の開発を開始。今年3月9日から本格稼働を始めた。11年に世界首位の座についたスパコン「京」の後継機に位置付けられる。理研計算科学研究センター(神戸市中央区)の松岡聡センター長は「京は演算性能を追い求めたが、富岳は計算速度でなく計算性能の高さと広がりを目指した。スマートフォンのアプリでも動くことから、汎用の情報技術(IT)と広くつながった。スパコンの世界にとどまらず、ITの中心的な役割を担うのにふさわしい、ITの頂点となるマシンを作れたと言える」と胸を張る。

当初21年度の供用開始を目指していたが、新型コロナウイルス感染症対策などに利用するため、20年4月から一部の計算資源の利用を前倒し新型コロナ研究に活用。新型コロナの治療薬候補探索や室内環境におけるウイルス飛沫(ひまつ)感染の予測によるマスクの効果の検証などの成果を上げた。

松岡センター長は「科学者は新型コロナという世界的な困難にどう対応すべきかという“挑戦状”を突きつけられた。チャレンジ精神を発揮し富岳を活用して困難に取り組むことが富岳の進歩にもつながる。結果的に本格運用を前倒しできた」と強調する。

9日に始まったのは富岳の計算資源の半分を割り当てる「一般利用」枠。感染症対策や次世代コンピューティング研究、災害リスク評価や量子シミュレーションなどの学術研究のテーマに加え、自動車や材料などの産業分野の研究も行われる。

今後、日本発のスパコン技術を海外展開することが期待される。富士通の新庄直樹理事は「国内外で商用展開しており、産業用途だけでなく社会課題の解決にも役立て、社会の進歩に貢献したい」と語っている。(冨井哲雄)

技術プロフィル

富岳は理研計算科学研究センターに設置された世界最速のスパコン。15万個を超える中央演算処理装置(CPU)を搭載し、毎秒44京2010兆回(京は1兆の1万倍)の計算を可能とする。京の最大100倍という性能とともに汎用性の高さが大きな特徴。20年にスパコン性能ランキングの4部門で2期連続の世界一となった。

日刊工業新聞2020年3月22日

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