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世界トップ研究者を教員に!東大が始める新制度の中身

東京大学は世界トップクラスの研究者が同大の教員としてリモートで講義、単位付与、研究指導、セミナー参加などをする新制度を4月に始める。多忙な研究者が来日することなく、正規教員とほぼ同等の幅広い活動をオンラインで行う。新型コロナウイルス感染症を逆手に取り、これまでの国際的ネットワークを生かし、デジタル変革(DX)による教育研究の高度化を図る。コロナ収束後も有効な、他大学に先がけた仕組みで注目される。

4月就任の藤井輝夫次期総長は世界の研究大学との関係強化を掲げており、この「グローバルフェロー制度」はその一環。グローバルフェローの称号付与の対象は、外国の大学・研究機関に所属しており顕著な業績を持つ教員・研究者だ。

契約により多様な形が可能。単位認定も含め外国大学での1科目分の英語講義をそのまま実施したり、学生数を特定して研究指導をしたり、研究プロジェクトの議論に頻繁に参加したりできる。先行事例として大学院経済学研究科で米国教員2件があるほか、工学系研究科でも検討中だ。

ポストコロナではオンライン活動の効果アップと、対面が重要な実験やフィールドワークの充実というモデルが一般化するとみられる。

同大はその先手を打ち、世界的な研究者の同大への関わりを強めていく。

日刊工業新聞2021年3月19日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
先行の東大経済学研究科ではノースウエスタン大学と、カリフォルニア大学バークレー校の教員を迎え、「研究科の教員が2人、それも世界トップク ラスの頭脳が増えた」具合なのだという。ノースウエスタン大学からは、同大が実施する講義を「購入」し、東大の講義として実施する「バイアウト」の契約という点もユニークだ。バイアウトは、必ずしも学内教職員が手がけなくてよい教育研究の活動を、競争的資金の間接経費などを元手に、外部人材に支援してもらうものだ。政府議論で数年前から出ているも、はっきりした形が見えていなかっただけに、「なるほどこんな形で教職員の負担を抑えながら、高品質の講義・教員を丸ごと繰り入れられるのか」と感心した。

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