空間デザインとサービスを融合、リモート接客はもっと広がるか
コロナ禍でリモートでの接客が広がっている。宿泊業や小売業などの店舗をもつ業態でも、遠隔で接客を補助できると現場の省人化を図れる。設備や什器(じゅうき)メーカーは遠隔接客サービスを商材の付加価値として提案する。サービスのコストを極力抑えたり、空間デザインとサービスを融合させたりする点が特徴だ。(小寺貴之)
ソニーマーケティング(東京都品川区)はテレビの「ブラビア」を業務用ディスプレーとしてホテルに提案している。マーケット開発営業課の光成和真統括課長は「マイクスピーカー付きのカメラを接続すれば、すぐに始められるのが利点」と説明する。
ブラビアの基本ソフト(OS)は米グーグルの「アンドロイド」だ。そのためウェブ会議サービスアプリ(応用ソフト)をダウンロードすればすぐに遠隔接客ができる。ホテルのフロントのブラビアにウェブカメラをつないで、他拠点から接客する使い方を提案している。機器の安定性やサービスを検証した結果、「接客の質を下げないためには画質が重要」(光成統括課長)だった。接客用のディスプレーは接客者を大きく表示する。画質が落ちると即席感が出てしまう。
オカムラはUsideU(東京都中央区)と組んで、小売店舗での遠隔接客を提案する。オカムラは店舗や商品棚、デジタルサイネージ(電子看板)のデザインを手がける。目に留まる棚を作ることで、来店客の足を止めやすくする。
例えばスーパーにみそを買いにきたお客にワインの新作を勧める場面では、お客がワインの棚の前を通過するのは一瞬だ。商品棚のサイネージに接客者を表示するだけでは、なかなか足を止めてもらえない。その場にいる店員が声をかけるケースと比べると遠隔接客は効果が落ちる。
オカムラの鈴木晃夫デジタルソリューション室室長は「売り場のデザインが重要になる」と説明。同社はデジタルサイネージに棚の並ぶ商品の紹介コンテンツを流すなど、店舗での購買体験をデザインしてきた。目を引き、足を止めやすい棚作りと接客サービスを組み合わせることで効果を増す。オカムラのサイネージもアンドロイド端末だ。マイクスピーカーなどを接続すれば始められる。
安価なウェブ会議サービスが広がり、什器メーカーは商材のシステム提案にサービスを組み込む。小売店舗の商品棚を確保したいメーカーや卸も提案しやすくなった。店舗側にとっては遠隔接客ソリューションを活用できる環境が整いつつある。