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撥水コーティング剤で石材強化、文化財保護に生かす

撥水コーティング剤で石材強化、文化財保護に生かす

コーティング剤を塗布した石材。強度とともに撥水性を高める(コルコート提供)

コルコート(東京都大田区)は、シリケート、機能性コーティング剤の製造販売や透明樹脂の射出成形を手がける。撥水(はっすい)コーティング剤「SS―101」は石材に塗布することで強度が増し、撥水性を付与する。首里城(那覇市)の天女橋など重要文化財の補修にも採用された。最近では猪方小川塚古墳(東京都狛江市)の横穴式石室の保存工事にも使われた。

石材に塗布すると隙間に浸透して基材と反応して強度を高めることができ、表面をコーティングして水の浸入も防ぐ。一度の塗布で複数の機能を付与するため、施工者の作業負担を軽減できる。深くしみこませることで、撥水などの効果が長時間持続する。

石を用いた建造物は雨などに長年さらされることで、崩れやすい状態に劣化する。特に大型の建造物の場合、移動を伴う補修は難しいが、SS―101はスプレーやはけで塗布できるため、現場での作業が可能だ。

猪方小川塚古墳は2011年に発掘された。石室には柔らかい凝灰質砂岩が使われており、強度に課題があったが「貴重な古墳であり、一般の人も見学できる形で保存したい」との狛江市の意向に応えるため、SS―101の処方などを工夫した。古墳は20年春に一般公開を始めた。

SS―101の売り上げは、まだ多くないが「ニッチな分野であり社会貢献の一環として捉えている」(松元泰裕取締役)という。現在は国内での導入が主体となっているが、タイなど海外でも実績が出始めており「文化財保護に貢献する日本製のコーティング剤」(同)である点を訴求していく考えだ。

同社では、さらに用途を広げられる製品として研究が進められている。いま着目しているのが石垣などの建材分野だ。石の風合いを生かしたまま補修が可能な点を訴求する方針だ。建材メーカーに対する認知度の向上に向け、情報収集を進めている。(江上佑美子)

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