EVや自動運転で進化するタイヤを計測、全長50mの室内模擬路面を使った試験装置
電気自動車(EV)の普及、自動運転技術の高度化が進み、クルマの効率的な加速・制動への要求は今後も高まる。タイヤは自動車唯一の接地部品で、その性能向上に大きな期待がかかる。国際計測器の「フラットロードタイヤ総合試験装置」は駆動・制動・横すべり時のタイヤにかかる負荷が測れる。全長50メートルの室内模擬路面を用い計測するため従来の回転路面式試験などに比べ、実車走行に近いデータ取得が可能だ。
同装置は被試験タイヤを装着した「高速トルク発生装置」を搬送ユニットに組み込み移動させて試験する。トルク発生装置内のサーボモーターの回転数を変えることで、タイヤに対する負荷を変えていく。装置開発について松本繁会長は「動力循環機構を担う、トルク発生装置を搬送ユニットに組み込んだこと」を重要な点に挙げる。
トルク発生装置は減速機やサーボモーターなどで構成しており、タイヤに負荷を与えるための重要な部分。同社のさまざまな試験機にも用いているが、搬送ユニットに組み込んで移動させるという発想の具現化と50メートルを走らせるユニット自体の軽量化に苦心した。
タイヤ性能の測定結果には気温が大きく影響を与える。フラットロードタイヤ総合試験装置は室内試験のため繰り返し精度が「ずばぬけて高い」(村内一宏取締役技術本部副本部長)。タイヤ自体の熱に関しては、試行錯誤しながら最適な試験間隔を見つけた。
模擬路面は特殊セラミックスを採用し、ドライ・ウェットを含め国内外の路面をモデリングできる。「凹凸の少ない安定したフラットな路面も重要な要素」(同)で路面については今後、雪や氷路面の再現を研究する。
新型コロナウイルスの影響で延期していた受託試験を茨城県古河市の「古河テクニカルセンター」で今春から本格的に行う。すでに国内の大手タイヤ・自動車メーカーにはサンプルデータを配布し、一部からは装置購入の引き合いもある。
海外市場では欧州大手タイヤメーカーにデータを配布。「特に力を入れるのは中国」(松本会長)としており、上海にある子会社に実機を設置して受託テストに充て、販売につなげたい考えだ。(西東京・藤野吉弘)
製品プロフィル
全長50メートルの室内模擬路面を被試験タイヤを装着した搬送ユニットが走行してタイヤ性能を試験する。天候や気温、ドライバーの資質に左右されず、安定した試験が可能。スリップ率、接線力、トルク、コーナリングフォースの制御方式を試験目的に合わせて切り替えられる。試験可能な最高速度は時速65キロメートル。最大トルクはプラスマイナス2000ニュートンメートル。