春闘本格化!ベア「2%程度」アップはどうなる?労使トップに聞いてみた

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経団連労使フォーラムであいさつを代読する久保田政一事務総長

新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中で、春季労使交渉(春闘)が2月中旬から本格化する。連合は基本給を底上げするベースアップ(ベア)の「2%程度」引き上げという昨年同様の要求を掲げた。一方、経団連は企業業績が二極化しており一律のベアは困難との立場。「官製春闘」の下で続いてきた賃上げの流れがどこまで維持されるのかが焦点だ。コロナ禍で変わる働き方も論点になる。(編集委員・池田勝敏)

「賃上げのモメンタム」焦点

【経団連】横並び・一律に難色 【連 合】「2%程度」要求堅持
経団連と連合の懇談会。オンラインであいさつする中西会長(スクリーン)

「政労使で賃上げの流れを作ってきた。デフレ脱却、経済の好循環に向けた取り組みはやっと緒に就いたばかり。賃上げの流れは社会全体で共有されなければならない」。1月都内で開かれた経団連と連合のトップ会談で連合の神津里季生会長はこう話した。2014年以降、デフレ脱却に向けて政府が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」の下で、賃上げ率は7年連続で2%以上となっている。神津会長はこの流れを「曲げることはできない」と訴える。

経団連の中西宏明会長も「日本の賃金水準が経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている。危機感を持っている」と指摘、労使ともに賃上げの流れを維持するという方向性は一致している。

しかし、今年の春闘がこれまでと違うのはコロナ禍により経済が打撃を受けていることだ。連合は、ベアの「2%程度」引き上げというこれまでの要求水準を維持した。経団連はコロナ禍で企業業績がまだらになっていて、業種の横並びや一律の賃上げを検討することは「現実的ではない」と難色を示す。業績好調の企業はベアも「選択肢」としたが、業績悪化の企業はベアは困難で「事業継続と雇用維持を最優先にすべきだ」とする。

すでに、ホンダなどの労働組合がベアの要求を見送る方針が明らかになっているが、賃上げをめぐっては厳しい交渉が予想される。

一方、コロナ禍は働き方の変化を迫っている。経団連の中西会長は「働き手が働きがいと働きやすさを実感できる職場環境作りが今回の春闘の大きなテーマだ」とも指摘する。多くの企業でテレワークが広がる中で、労働時間の管理や評価の仕方の難しさが指摘されている。テレワークができずに生産現場で働く従業員や、医療、介護、物流などのいわゆる「エッセンシャルワーカー」の処遇改善も課題だ。ウィズ・アフターコロナの働き方を見据えた真剣な協議も労使に求められる。

労使トップインタビュー テレワーク 柔軟に選択

■経団連副会長 経営労働政策 特別委員長(コマツ会長) 大橋徹二氏 報いるカタチ、個社で議論

―連合は2%程度のベアを求めています。

「賃金に関してモメンタムを維持したいというのは経営者としてぶれてない。しかし、コロナの影響が業種や企業によってかなり異なる。一律(の賃上げ)はなかなか難しいのではないか」

―何をもって賃上げのモメンタムを維持したと言えますか。

「モメンタムの維持は全体平均で議論できるものではない。業績が厳しい企業であっても、交渉を通じて何とかこれだけは報いたいということが出てくると思う。そこがモメンタムを感じてもらえるところだと思う」

―テレワークの議論は。

「今後の柔軟性のある働き方の一つだ。コロナ禍でトライして、テレワークに合う業務、合わない業務が分かってきた。リアルでやる業務とテレワークの業務のミックス度合いを、自社に合うようによく考えてもらいたい。テレワークは今後も使えると思った企業は多いだろう。また、テレワークはジョブ型雇用と親和性がある。賃金だけでなく働き方も議論してもらいたい」

―「エッセンシャルワーカー」への配慮は。

「安全、健康を確保できるような体制を敷かないといけない。コロナ禍を機に自動化や多能工化が進めば生産性向上にもつながる」

―コロナ禍は労使交渉にどのような影響を及ぼしますか。

「コロナ禍という厳しい北風が吹く中で、雇用維持と事業存続をきちんとして(賃上げの)モメンタムを考えながら臨むという基本線は、労使で一致していると思う。賃上げの水準の考え方は違うが、個社でとことん議論すると収れんするだろう。コロナ禍でいろいろなことが見えてきた。会社の強みや弱みを議論する良い機会になるのではないか」

連合会長 神津里季生氏 最前線の思い 受け取ってほしい

―コロナ禍でも2%程度のベアを掲げました。

「コロナ禍で最前線で働いている人たちの思いを経営者に受け取ってもらいたい。また、全体をかさ上げする営みを継続しないといけない。『コロナだから賃上げできない』で終わってしまうと、将来の世代へ責任を果たすことができない。賃上げの流れを断ち切ってしまうと経済活動が停滞し生活がさらに苦しくなってしまう」

―経団連は一律の賃上げは難しいと主張しています。

「経団連は日本全体で捉えてほしい。20年で日本の賃金水準が他の先進国と乖離(かいり)してしまった。追いつくには2%でも足りない」

―テレワークの議論は。

「仕事の性質や個人の性格で向き不向きがある。テレワークができないのはおかしいという運用の仕方になってほしくない。個人の事情に応じて柔軟にできるよう、労使で仕組みを作ってもらいたい。テレワークは放っておくと格差が開きかねない。労組がないところは心配だ。警鐘を鳴らさないといけない」

―大企業などが下請け取引の適正化を宣言する『パートナーシップ構築宣言』が20年から始まりました。

「ここ数年、サプライチェーン(部品供給網)における付加価値の適正分配に取り組んできた。モノやサービスはそれを提供する会社だけでなく、子会社や取引先も汗をかいているから世に送り出せる。全体に賃上げが広がらないといけない。17年春闘ではトヨタ自動車のグループ会社がトヨタを上回るベアを獲得し、分配構造の転換が目に見える形で進んだ。パートナーシップ構築宣言の登録企業が広がっている。この仕組みが分配構造の転換につながる賃上げに結びつくことを強く期待している」

日刊工業新聞2020年2月12日

キーワード
経団連 春闘

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