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iPS細胞で神経細胞作製。アルツハイマー病など病態再現

慶大・順天堂大が脳と脊髄の領域、正確に作り分け
 慶応義塾大学医学部の岡野栄之教授や順天堂大学大学院医学研究科の赤松和土特任教授らは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から脳や脊髄にあるさまざまな神経細胞を作り分ける技術を開発した。同技術を利用し、アルツハイマー病と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者のiPS細胞から作った神経細胞で、それぞれの疾患の病態を再現できることを確認した。
 
 神経難病の症状を正確に試験管内で再現できるため、神経難病の診断や治療方法の開発が期待できる。成果は6日、米科学誌ステム・セル・リポーツ電子版に掲載される。 

 認知症の6割以上を占めるアルツハイマー病は、大脳皮質にある神経細胞「ニューロン」が障害を受け、記憶障害などを引き起こす。一方、ALSは脊髄運動ニューロンが障害を受けて筋力低下や運動障害などを示すことが知られている。現状ではこれらの根治療法は開発されていない。

 受精卵から体が作られる過程で、神経管と呼ばれる1本の管が、小さな領域に細分化され脳や脊髄として機能するための複雑な構造に変化する。その小さな領域への変化はウィント、レチノイン酸、ソニックヘッジホッグと呼ばれる3種類の物質が関わることが知られている。

 研究チームは、iPS細胞から神経細胞を作る際に、3種類の物質の働きを調節する薬剤の濃度を変化させるだけで、前脳から脊髄までの脳領域の神経細胞を作り分けることに成功した。

 現在、ヒトiPS細胞を使い神経難病の治療法の開発が試みられている。だが、多くの神経難病は脳や脊髄の特定の部位だけが障害を受け、他の部位では症状が再現しにくい。このため、病変部位の細胞を効率良く作る技術が求められていた。
日刊工業新聞2015年11月06日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
専門家ではないので凄さを正確に理解することはできないが、治療法の開発までどのくらいのレンジがあるのかを知りたい。

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