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IMFなど公的機関の金買越量が昨年6割減のなぜ?

コロナ禍で3年ぶりのマイナス
IMFなど公的機関の金買越量が昨年6割減のなぜ?

写真はイメージ

各国中央銀行や国際通貨基金(IMF)など公的機関の2020年の金の買越量が、大幅に減少した。金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のリポートによれば、20年の買越量は前年比59%減の272・9トンと3年ぶりにマイナスに転じた。11年連続の購入超過となったが、コロナ禍による経済環境の悪化を受けて、近年の買い手の中心だった新興国で金を売却する動きが広がった。

中央銀行の多くは、資産のリスク分散を図るため、外貨準備の一部として換金性に優れる金を保有している。米中摩擦激化で経済不安が高まった19年の公的機関の金の買越量は、ドル・金の兌換(だかん)制度が廃止された71年以降で最高の668・5トンだったが、20年は大きく落ち込んだ。

近年の大口の買い手だったロシアは、年間通じて買い越したが年央から売却量を増やしたほか、モンゴルやウズベキスタンなどが年間で売り越した。WGCはリポートで「一部の中央銀行は(コロナ禍の影響で)苦しい経済を支援するために、(金の売却で)流動性を得た」と指摘する。

一方、トルコやインド、アラブ首長国連邦(UAE)などは引き続き買い越しとなり、新興国中銀の金需要には根強さもある。20年はコロナ禍による景気悪化が中銀全体の金需要を抑え込んだが、「21年は景気回復が進めば、中銀の金購入も回復に向かう」(WGCの森田隆大顧問)との見方がある。

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