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膝サポーター 痛くない人向けにも

第一三共ヘルスケア、スポーツ需要開拓
膝サポーター 痛くない人向けにも

製品の外装では機能性や高級感を訴求

 膝が痛くない人も使って下さい―。第一三共ヘルスケア(東京都中央区)がワコールと共同開発して2014年3月に発売した「パテックス機能性サポーター ハイグレードモデル」の販売が好調だ。従来品は痛みに悩む人の購入を想定していたが、ハイグレードモデルはウオーキングやスポーツなどを楽しむ活動的な人を狙った。この結果として顧客層が広がり、パテックスというブランドイメージの強化にもつながっている。

 【ワコールと提携】
 ハイグレードモデルには厚さ約0・7ミリメートルの伸縮性に優れた素材を使い、動きやすさを追求。サポーター裏面の上端部と下端部には微細な凹凸を施し、グリップ力を発揮させて上下方向へずれにくくした。これらの機能はワコールが培ってきた技術を基に実現されており、ハイグレードモデルの外箱にも共同開発した旨が記載されている。

 同商品の投入が奏功し、第一三共ヘルスケアが展開するサポーター製品は14年4―12月期の売上高が前年同期比24%増となった。サポーター市場は11―13年度に年率13%程度成長したものの、14年4―12月期は消費増税の影響などがあったためか前年同期比2%増にとどまった。こうした状況を踏まえると第一三共ヘルスケアの健闘は目立つ。

 【想定顧客見定め】
 ただ同社は単純に機能の高さを訴求したわけではなく、想定顧客層を見定めたマーケティングを展開した。パテックス機能性サポーターの従来品は、膝の痛みに悩む高齢者が自宅で着用してもらうといった使われ方が主流だという。一方でハイグレードモデルは、外出時や軽い運動時にも使える製品と位置づけた。

 販売促進に当たり重視したのが、テレビCMと口コミの相乗効果だ。現在はインターネットの検索エンジンを使いこなす消費者も多い。しかし「膝や腰に悩みや関心がある人は、検索をしてもサポーターにはたどり着きにくい」(第一三共ヘルスケアの和田宗善マーケティング部ブランドマネジャー)。このためCMで同社ウェブサイトへの誘導を図っている。

 【口コミを活用】
 同社サイトにアクセスした人は、製品利用者の口コミを多数閲覧できる。同社は14年4―5月にかけ、登山やランニングの雑誌でハイグレードモデルのモニターを募集。該当者に利用の感想などを取材し、6月に口コミ一覧として公開した。さらにランニング専門サイト「ランネット」の画面上にリンクを張ってもらい、スポーツを好む人の流入を図った。10月にはテレビCMの効果も相まって自社サイトへのアクセス数は平常時の約2倍に増えたという。

 第一三共ヘルスケアのマーケティング施策に奇をてらったものはない。だが他事業者との提携による製品力強化、新規顧客の開拓による販売量の上積み、マス媒体とウェブ媒体の効果的な併用など、堅実な施策を積み重ねて結果を出している。「(体の)こりや痛みに関するトータルブランドとして、生活の質の向上に貢献する」(同)ことを目指すパテックスから、今後どのような製品が生まれるのかが注目される。(斎藤弘和)
日刊工業新聞2015年03月27日 モノづくり面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 記事でも触れていますが、同社のサイトには利用者の口コミ情報がアップされています。山登り、ウォーキング、ジョギング・マラソンなどの用途別に情報が整理されており、「足の疲れ方が違う」「走っていて足がスッと上がる」といった評価を確認できます。

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