メルカリと阪大が研究倫理指針・規程を今春公開、ベンチャーや産業界の底上げに
メルカリと大阪大学は、民間企業での研究倫理指針や規定などを今春にも公開する。ビッグデータ(大量データ)とプライバシーの問題など、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)活動の方法論を構築し、研究開発を下支えする。大規模な研究開発組織を持たないベンチャー企業でも公共性や研究倫理が問われる場面が増えている。指針を示すことで倫理審査の高度化と普及を目指す。
メルカリの研究開発部門「メルカリR4D」と阪大の社会技術共創研究センター(ELSIセンター)の共同研究の成果を発信する。研究倫理指針や審査の運用など初案が完成し、ベンチャー組織でも運用できると手応えを得た。内容を磨き、春にも公開する。
欧州を中心に提唱されている「責任ある研究・イノベーション」(RRI)という概念を民間企業に導入する。
審査時に課題を整理し、倫理面と法制度、社会的な視点から課題解決を模索する。
例えば法律に照らして研究可否を判断するのでなく、倫理にかない、社会に求められ法制度が追いついていない課題は法制度の修正なども視野に入れる。影響を限定できる範囲で小さく試して効果を検証するなど、研究開発の道をふさぐのではなく、道を開くための審査プロセスを作る。
倫理審査はともすると、やってはいけない内容をリスト化し、照らし合わせる作業になってしまう。こうした審査プロセスでは研究開発が萎縮し、審査自体も形骸化するリスクがあった。道を開くには倫理や法、社会的な側面から多角的な検討が必要になる。こうした検討ができる人材を育成するカリキュラムも開発。阪大が展開することでベンチャーや産業界の底上げにつなげる。
日刊工業新聞2021年2月3日