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霧島酒造、地元の「芋」でこだわり焼酎

最終商品に至るまでの過程がどれほど同一の経済圏でなされているか
霧島酒造、地元の「芋」でこだわり焼酎

霧島酒造の焼酎の原料となる芋をトラクターで掘って収穫する(サツマイモ生産農家)

 焼酎の売上高全国1位の霧島酒造(宮崎県都城市)。同社では芋焼酎の製造過程で生じる焼酎粕(かす)で発電する日本初の「サツマイモ発電」や南九州での原料調達、都城市と連携したふるさと納税など、地域に根ざした取り組みで地方創生の一翼を担いつつある。
 
 芋くずや焼酎粕の廃液処理は、全ての焼酎メーカーが抱える大きな課題だ。霧島酒造は2003年から廃液処理に取り組み、06年に焼酎粕をバイオマス資源として利用するリサイクル事業を開始。12年にリサイクルプラントを増設し、メタン発酵によりガス化することで、蒸気ボイラの熱源として使用してきた。

 1日最大800トン発生する焼酎粕から有効利用できるバイオガスは総発生量の44%止まりだったため、14年9月に13億円を投じて発電機3台を導入。「サツマイモ発電」を始めた。「昼はボイラ熱源に、夜は発電に利用し、バイオガスを100%リサイクルできるようになった」と生産本部グリーンエネルギー部の鶴憲一氏は説明する。年間400万キロワット時の発電量は南九州の約1000世帯分の年間消費電力に相当する。九州電力へ売電し、年約1億6000万円の収入を見込む。

ふるさと納税で一役、地域に還元


 芋焼酎用のサツマイモは全て、宮崎県と鹿児島県の生産農家約2200軒が生産する。1反当たり1000貫(約3・75トン)収穫できることから「黄金千貫」と名付けられた芋から、こだわりの焼酎「黒霧島」が作られる。芋生産農家の森博幸氏は「生産拡大に伴い、芋の単価引き上げを快諾してもらった。良いものを作って高く売れる。互いの信頼関係があるからこそ成り立つ」と話す。

 都城市は肉用牛、豚、ブロイラーの産出額で全国トップ。畜産ブランド肉と霧島酒造の焼酎のセット「日本一の肉と焼酎」は、池田宜永都城市長が「地産地消と地産外消」という”ふるさと納税“の人気謝礼品の一つだ。従来年間200万―300万円だったふるさと納税額は、14年10月開始から15年11月1日までで約23億688万円(都城市総合政策部総合政策課)と急増している。

 地域資源を活用し付加価値を高める6次産業化について、霧島酒造の江夏拓三専務は「地域全体の底上げのためには地域の芋を使い、全国で売り、地域に財政という形で還元することだ」と話す。
(文=山下絵梨)
日刊工業新聞2015年11月04日 モノづくり面
田鹿倫基
田鹿倫基 Tajika Tomoaki 日南市 マーケティング専門官
地域の商品を外に販売したときに、地域経済に与える影響は販売額だけでは分からない。その原料をどこから調達しているか、という一連のバリューチェーンを見ることが大事だ。霧島酒造の場合は、原料の芋を都城市や隣の鹿児島県曽於市から調達している。曽於市は鹿児島県だが、経済圏として都城商圏に属しているので、地域経済の活性化につながってくる。大切なのは、最終商品に至るまでの過程がどれほど同一の経済圏でなされている か、という観点である。それを見ずに、最終商品の販売額だけ見ていても、地域経済への寄与度は分からない。

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