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「ボルボとのアライアンスで基盤はできた」いすゞ社長、次期中計への手応え

いすゞ自動車社長・片山正則氏 インタビュー
「ボルボとのアライアンスで基盤はできた」いすゞ社長、次期中計への手応え

いすゞ公式サイトより(写真はイメージ)

研究開発、ボルボと推進

―3カ年中期経営計画の最終年度(2020年度)でコロナ禍に見舞われました。

「今までの中計では成長戦略をとり『売り上げ増』にこだわってきた。目標の売上高は2兆3000億円だったが、新型コロナウイルスの影響で残念ながら現時点で2兆円を超えるのは難しい状況にある」

「感染拡大がなければ2兆2000億円に近い数字は出ていたが、新興国の成長が遅い面はあった。一方、アライアンス(提携)戦略は計画に対して十分達成した。中計の数字は到達できなかったが、施策はやりきれたと思う」

―21年度からの次期中計では、スウェーデンのボルボ・グループなどとの本格始動するアライアンスでの効果が求められます。

「研究開発で効果が出てくる。先行開発にはさらに力を入れるが、すべて自前主義ですると研究開発費が大きく増えてしまう。アライアンスを使い、実際の当社の経営負担はある程度抑えていく考えだ。その基盤はできた」

―電動化への対応は。

「電動化はインフラの整備、車両の使い勝手、充電時間、航続距離などいろんな課題や制約がある。従来は『今までの利便性を殺すわけにはいかない』という顧客(運送事業者)の声を代弁してきた。しかし、菅義偉首相のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)宣言、バイデン米大統領による米国のパリ協定の復帰などがあり、電動化は間違いなく世界の流れだ。持続可能社会の構築に向けて、輸送機器の役割も変わる。次期中計ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域へのアプローチをもう一段上げて、積極的に進めていく」

―電動化のアクセルを踏む一方、ディーゼルエンジンの方向性は。

「新興国でディーゼルエンジンの需要が急減するシナリオは考えづらい。ディーゼルの必要性は今後もある。新興国向けに、環境に優しく廉価なディーゼルを供給する責任は絶対にある。提携するエンジンメーカーの米カミンズと環境負荷が少ないエンジンを作っていく」

【記者の目/脱炭素、電動化へアクセル】

コロナ禍で事業環境が激変したものの、中計期間の3年間で他社との提携戦略を着実に進めてきた。脱炭素の急速な流れに対応するため電動化へのアクセルを踏み込む。CASE技術の進展で研究開発費の増大が課題となる自動車業界。提携の基盤が整ったいすゞは次期中計で開発分野をはじめ、その成果が求められる。(日下宗大)

日刊工業新聞2021年2月1日

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